研究課題/領域番号 |
20H04456
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
SAHA Pranab 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 主任研究員 (10391335)
|
研究分担者 |
米田 仁紀 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 教授 (00210790)
柴田 崇統 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (20773956)
原田 寛之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 副主任研究員 (30601174)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | レーザー荷電変換 / レーザー制御 / レーザー光源開発 / 大強度陽子加速器 |
研究実績の概要 |
2020年度は、各担当者が以下の6項目(①~⑥)の開発、全員でレーザー荷電変換実験を実施した。①レーザー光源開発・レーザー制御では、分担者:米田と原田がファイバー増幅器及び数μJのパルス出力を達成する最終段増幅器で構成する多段増幅レーザーシステムを開発した。②深紫外光レーザー開発では、分担者:米田が深紫外光生成に向け、2倍波・4倍波とそれらの加算である5倍波の生成に必要な非線形光学素子を選定・購入し、開発に向けた光学系を整備した。国内メーカーと共同で開発していくことも確認した。③レーザー出力の低減化では、分担者:米田と原田がイオンビームに照射するレーザー光を再度照射領域に16回像転送させる光学系を開発した。④イオンビーム最適化・相互作用理論研究では、代表者:サハがイオンビームライン(エネルギー:400MeV)のレーザー照射点におけるイオンビームの実空間・運動量空間の光学パラメータの最適化に向け、イオンビームのみの光学調整を実施し、レーザー照射点における分散関数ゼロを達成した。⑤遷移状態計測装置の開発では、分担者:柴田がレーザー照射時のイオンの励起準位状態や効率を計測するために必要な遷移状態計測装置の設計を完了した。⑥レーザー荷電変換実験整備では、分担者:原田がテストビームラインでのレーザー荷電変換実験に向けた準備として、50mの長距離の区間においてレーザー輸送光路を整備した。上記①と③で開発した光源と光学系を用いて、テストビームライン(エネルギー:3MeV)におけるレーザー荷電変換実験を始めて実施し、荷電変換率の測定手法の確立、レーザー照射による0.5%の荷電変換効率に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レーザー荷電変換実験研究の基盤であるレーザー光源開発・レーザー制御では、数100MHzのパルス列の多段増幅レーザーシステムの開発を目指したが、パルス列生成器やファイバー増幅部の故障が続いた。故障要因を特定したが、テストビームライン(エネルギー:3MeV)における初めてのレーザー荷電変換実験では、数100MHzのパルス列ではなく100μ秒程度のロングパルスのレーザー光で実験を実施した。レーザー出力低減に向け、イオンビームに照射するレーザー光を再度照射領域に16回像転送させる光学系の開発は成功し、その光学系を用いることで、初めてのレーザー荷電変換実験では、0.5%の荷電変換に成功した。その実験において、イオンビームの電流信号を周波数解析して荷電変換効率を導出する手法を確立した。新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言発令のため、予定していた実験を1回しか実施することができなかった。そのため、2021度に2回目の実験を実施する予定である。さらに、深紫外光レーザー開発では、非線形光学素子を選定・購入した。高出力化に向けて、メーカーと共同で開発すべく、試験準備を進めている。また、遷移状態計測装置の開発は、機器構成の設計、検出素子の選定・購入を完了した。2021年度以降、校正試験を実施し、設計通りの計測装置としての性能を満たしていることを確認する。400MeVビームラインでの実験に向けたレーザー光路の整備も完了した。安定性の確保には、空気の揺らぎの影響を抑制すべく、光路を真空状態にする必要があることが判明した。予定どおりの実験遂行とはいかなかったことから、現在までの進歩状況はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、本研究をさらに推進すべく、以下を実施していく。 2020年度に開発したレーザー光源では、パルス列生成器やファイバー増幅器の故障によりパルス列のレーザー光の生成・増幅が実現できなかった。故障要因は、増幅器内で発生した戻り光であることがわかった。このASEと呼ばれる戻り光をカットするバンドパスフィルターやアイソレーターを光路に追加することで、パルス列のレーザー光の増幅を実現させる。2020年度と同様、3MeVテストビームラインでレーザー荷電変換実験を実施し、イオンビームとレーザー光との時空間マッチングを成功させ、前回実験の0.5%を大きく上回る5%以上の荷電変換の達成を目指す。次に、深紫外光レーザー開発では、既存のレーザー光源から出力されたレーザー光(波長:1064nm)に対して、非線形光学素子を用いて波長変換(1064nmから213nm)をまずは実現させる。必要に応じて、追加で光学素子を購入する。遷移状態計測装置の開発では、構成部品を組み立て、校正試験の実施を目指す。レーザー光路整備に関しては、長距離のレーザー輸送における安定化が重要であるため、整備した50mの光路のレーザー輸送パイプを真空パイプに置き換え、空気の揺らぎの影響が少ない光路に改良する。また、そのレーザー光路の安定性を計測・評価できるように、レーザー輸送の最終段に設置するレーザー干渉計を構築し、計測を開始する。
|