研究課題/領域番号 |
20H04461
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
横尾 哲也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (10391707)
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研究分担者 |
金子 直勝 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 技師 (10870222)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 量子ビーム / 熱外中性子 / 電子励起 |
研究実績の概要 |
本研究は以下の二つの目的としている。 1)固体物質中の電子エネルギーに迫る熱外中性子を積極利用し、中性子スピンと電子スピンとの相関による散乱断面積を観測することにより、これまでに成されなかった中性子による電子励起を捉える。熱外中性子など高エネルギー中性子発生に有利なパルス中性子を利用した「高エネルギー中性子による電子励起」の測定技術を確立する。 2)「高エネルギー中性子による電子励起」を用いて、物性を理解する上で大変重要な電子の運動を捉える。当該研究課題では特に強相関電子系におけるスピン-電荷分離に着目し、高温超伝導体や低次元磁性体で実現する朝永ラッティンジャー液体におけるスピノン-ホロンのバンド分散を捉える。 このように熱及び熱外高エネルギー中性子散乱を用いた実験をおこない、中性子散乱では初めてとなる電子励起の観測を試みるものである。令和3年度は純良単結晶試料作成環境整備と低効率中性子モニターの開発について注力した。試料準備のための化学合成、試料焼結、単結晶育成(FZ法)などはKEK(東海キャンパス)の一部と、これまで共同研究でおこなっている東大物性研所施設での準備を進めてきたが、研究推進の利便性を鑑み関連機器をKEKに集約することができた。これにより、コロナ禍における不要な移動を必要としない試料開発環境が整備された。また、低効率中性子窒素モニターの整備については、昨年度までにおこなった窒素モニターの検討を踏まえて実機製作をおこなった。モニターは溶接を排除した歪みのない設計、かつ高エネルギー中性子線束に最適化した混合ガス、また現在劣化の問題が顕在化してきたCF4検出ガスを使用しないガス種の検討などを進め最適化されたモニター制作に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画に示したように実施計画としては、1)純良単結晶試料の育成ならびに2)低効率中性子モニターの開発を計画した。1)については、まだ単結晶育成にまでは至っていないものの、試料合成のための環境整備を整え作成開始にまで至っている。特に、当初KEK(東海キャンパス)の一部と、これまで共同研究でおこなっている東大物性研所施設での準備を進めてきたが、研究推進の利便性を鑑み関連機器をKEKに集約することができたことは大きな利点である。これによりコロナ禍における不要な移動を必要としない試料開発環境が整備された。2)のモニターについては、全く新しい設計をおこない、溶接を排除した歪みのない設計、高エネルギー中性子線束に最適化した混合ガス、また現在劣化の問題が顕在化してきたCF4検出ガスを使用しないガス種の検討などを進め最適化されたモニター制作に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はこれらの設備を利用して単結晶育成を開始する。得られた結晶試料についてはあわせてその結晶評価と物性評価を行うことで、良質な試料育成を目指す。予定している試料の中性子吸収断面積はさほど大きくないので、その強度は結晶の量に比例すると考えられる。したがって、極力良質かつ大量の結晶を用意する必要がある。また、並行して製作したモニターについて実際の中性子ビームを利用したモニターの健全性の実証との単結晶評価とを行う計画である。更に進めば中性子散乱実験のマシンタイムを確保し、予備的な非弾性散乱実験を実施する計画である。
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