研究課題/領域番号 |
20H04516
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木村 敦臣 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70303972)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 超偏極キセノン / 葉酸修飾酸化鉄ナノ粒子 / 肺癌検出システム |
研究実績の概要 |
超偏極キセノン(HPXe)MRIは近年臨床応用が始まった新しい画像診断技術であり、現在も目覚ましい発展を遂げている。一方で、早期肺癌に関しては癌組織に溶解したHPXeの緩和時間や化学シフト等のMRI特性に乏しいことから、本技術を用いた診断は進展していない。そこで我々は、磁性ナノ粒子である酸化鉄ナノ粒子を肺癌組織に送達させイメージングを行う造影HPXe MRIを着想した。本年度では葉酸修飾酸化鉄ナノ粒子(FA@Dex-IO NPs)を合成し、HPXe MRIにおける造影効果・体内動態について、酸化鉄ナノ粒子(PEG-IO NPs)と比較・検討することとした。 実験では、雄性ddYマウスを(ⅰ)FA@Dex-IO NPs群:肺癌誘発のためウレタン(500mg/kgBW)を腹腔内投与した3.5か月後にFA@Dex-IO NPs造影、(ⅱ) PEG-IO NPs群:同様にウレタン投与3.5か月後にPEG-IO NPs造影、の計2群に分類した。FA@Dex-IO NPsはデキストラン被覆した後、葉酸修飾したものを、PEG-IO NPsはPEG化されたものを使用した。これらを2群に対して尾静脈投与し、投与前・3時間後・6時間後・24時間後において、HPXeを自発呼吸下でマウスに吸入させ MRI撮像を行った。 以上の実験の結果、FA@Dex-IO NPs群では投与3時間後、6時間後に癌を含む部位の信号が有意に低下し、24時間後についても有意な低下がみられた。PEG-IO NPs群では投与3~6時間後に癌を含む部位の信号が有意に低下したが、投与24時間後には信号が回復した。以上より、HPXe MRIにおいて酸化鉄ナノ粒子は肺癌に集積し造影効果があること、さらにこれを葉酸修飾することによってより高い造影効果をもつことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度において、ポリエチレングリコール被覆酸化鉄ナノ粒子(PEG-IO NPs)を肺癌マウスモデルに投与したところ、本造影剤により超偏極キセノン(HPXe)MRIによる肺癌イメージングが可能であること、および特徴的な体内動態を示すことを明らかとした。この結果を踏まえて、今年度では、酸化鉄ナノ粒子の表面を葉酸修飾する事で肺癌へのターゲッティングを企図した。この結果、葉酸修飾酸化鉄ナノ粒子を用いて表面修飾が造影効果や体内動態に及ぼす影響を詳細に検討し、その優れた特性を明らかとすることができた。これらの知見は、今後様々な基材を用いたHPXe MRIに基づく肺癌検出システムを開発するうえで、重要であるため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題にて、超偏極キセノン(HPXe)MRIとナノメディスンを融合することで他に類を見ないHPXe-MRI による肺癌検出システムと治療効果判定に有効な前臨床評価系を構築することに成功した。この成果に基づき、今後は、当初計画通り新規肺癌診断・治療法の開発に着手する。 近年、癌組織に集積した磁性ナノ粒子に対して、高周波交番磁場(数百kHz)を照射して生じる熱を利用して癌細胞を殺傷する磁気温熱療法(magnetic hyperthermia)、ならびに超低周波交番磁場(数十Hz)を照射して生じる粒子の振動・回転による渦動を利用して癌細胞を殺傷する磁気メカニカル療法(magneto-mechanical therapy)からなる磁気活性化療法が注目されている。申請者の開発したHPXe-MRI法に基づく超高感度肺癌検出システムを利用して、早期肺癌組織に集積した磁性ナノ粒子を検出し、さらに磁気活性化療法を施し、治療過程の追跡を試みる。
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