研究課題/領域番号 |
21H00470
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡野 潔 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (80221844)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 仏教文学 / ジャータカマーラー / アヴァダーナ / アヴァダーナマーラー / Jayamuni / ネワール |
研究実績の概要 |
本研究課題は、次の三つの課題を柱にして、文献学的研究を行うものである。 「課題1」はネワール族の仏教徒たちが作った梵文のアヴァダーナマーラー文献群(仏教説話集)の研究。 「課題2」はクシェーメンドラ作『菩薩アヴァダーナの如意蔓』(bodhisattvAvadAnakalpalatA、略号 BAKL)の諸章の研究。 「課題3」は 『ハリバッタ・ジャータカマーラー』(haribhaTTa's jAtakamAlA、略号 HJM)の Straube 出版本で初めて公開された諸章の和訳を行い、全訳を完成させることである。 2021年度は、2021年4月の交付申請書に記した研究計画どおりに「課題1」と「課題3」を中心に着実に研究を進め、それぞれに1本ずつ論文を発表した。すなわち以下のような成果である: 「課題1」については、仏伝を内容とする梵文アヴァダーナマーラー文献の一つである『如来出生アヴァダーナマーラー』(tathAgatajanmAvadAnamAlA、略号 TJAM)の第15章『後宮の歓楽の中にある菩薩への出離の勧告という章』の研究を行い、その章のサンスクリット本文の校訂テクスト・和訳を作り、その章の内容を分析した長い論文を発表した。特に17世紀のネワール梵語文学の形成に密接に関わる Jayamuni という人物に焦点をあてて論じた。 また「課題3」については、HJM の第23章『カナカヴァルマン・ジャータカ』と第27章『ケーシャバ[医師]ジャータカ』と第34章『シェーナカ[大臣]ジャータカ』の和訳を発表した。 また「課題2」についても、BAKL の第106章『カナカヴァルマン・アヴァダーナ』の和訳を行った。それは HJM の第23章の和訳に付随する形で発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題期間の初年度の2021年度においては上記の三つの課題の中で一番大変な仕事である「課題3」の仕事に最大の労力をつぎ込み、 HJM の訳すべき諸章の中で最も重要な3つの章(第23, 27, 34 章)の翻訳を完成させて発表した。苦労はしたものの、これは計画どおりの順調な進展であった。しかし「課題1」の研究においては、予想していた以上の大きな成果があった。私は TJAM の第15章の中に22箇の釈尊のアヴァダーナ(前世物語)への言及を見つけ、それらの記述のソースを調べることにより、Jayamuni が筆写した TJAM 第15章は Jayamuni が筆写した別の梵文学の作品である『マハッジャータカマーラー』 mahajjAtakamAlA と 『ジャータカマーラー・アヴァダーナスートラ』jAtakamAlAvadAnasUtra に基づいて作られた作品であることを明らかにすることができた。これは17世紀ネワールの梵語文学の形成において Jayamuni という人物がいかなる役割を果たしたかを解明するための大きな発見であり、予想以上の研究の進展である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題期間の5年間の前半期間の約3年においては、エフォートの優先順位として、第一に「課題3」、第二に「課題1」を優先させて、研究を進めてゆく計画であり、この点で研究期間の1年目である2021度に立てた推進方策に何ら変更は無い。 「課題3」について、私は2021年度に HJM の第23章・27章・34章の三つの章の和訳を発表したので、次の2022年度は HJM で最も長大な章(他の章の数倍の長さをもつ章)である第25章『キンナリー・スダナ』の和訳にとりかかり、それを発表する予定である。 また「課題1」については、2021年度には私は TJAM 第15章の研究を発表したので、2022年度にはそれに続いて第16章・17章・18章・19章にとりかかり、その研究を一気に2022年度中に発表する予定である。
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備考 |
上記の「岡野潔(九州大学)の論文リスト」や「九大コレクション」から、岡野が執筆した40本以上の論文のPDFをダウンロードすることが出来る。
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