研究課題/領域番号 |
21H00480
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
住友 陽文 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (30262934)
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研究分担者 |
小林 啓治 京都府立大学, 文学部, 教授 (60221975)
細見 和之 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (90238759)
前川 真行 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (80295675)
岡野 八代 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (70319482)
田中 希生 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (20722903)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 近代天皇制 / 国体 / デモクラシー / 思想史 |
研究実績の概要 |
2021年度は、「近代天皇制思想史研究会」を立ち上げ共同研究を遂行するための体制を整えるとともに、各研究者は共通軸を見据えながら各自の調査研究を進め、その中間成果を研究会・シンポジウムでの報告と議論を通じて共同研究にフィードバックした。 研究会では、住友が「中曽根康弘の天皇論と民主主義論」をテーマに報告を行い、コメンテーターとして大谷伸治氏を招聘し議論した。シンポジウムは関連分野の研究者・一般の参加者を対象として2回開催した。テーマはともに「君主制なるものと個と社会」とし、代表者・分担者が個別研究の中間成果を報告した。第1回は「君主制的共和主義とは何か」(住友)、「全体と個と天皇制―和辻と恒藤の比較から」(小林)、「保田與重郎と天皇制-『萬葉集の精神』を軸にして」(細見)、第2回は「ミシェル・フーコーにおける法と歴史」(前川)、「場としての天皇-近代日本の王権」(田中)と、共通軸を見据えながらも多面的な視点からの報告・議論を行うことが出来た。 これらの研究会・シンポジウムでは、君主制的共和主義の概念をめぐる論点、天皇制を検討する上での日本固有の思想史的文脈(家族的なるものなど)を押さえることの重要性、天皇制とアナーキズムの関わり、「内面化」をめぐる問いの立て方に関する論点など、個別研究報告をもとにしつつも共同研究全体に関わる重要論点を見出せた。さらに、本研究の課題として「文明と文化の対立」という枠組みとは異なる独自の視点を模索していくことの重要性や、天皇制研究を進める上での表象論から存在論への視座転換の必要性などが提起された。特に後者については、フーコーの規律―権力に関する議論(身体に対して行使される権力)の中に表象論から存在論への転換の可能性が見出されることも示された。これらの論点・課題は今後の各自の研究に反映させ、次回以降の研究会・シンポジウムでさらに議論を深めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、「近代天皇制思想史研究会」を立ち上げて今後の共同研究の推進体制を整えた上で、研究代表者・分担者各自が個別研究を進め、その中間成果を研究会・シンポジウムを通じて報告・議論し今後の重要論点を共有・検討することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度の研究会・シンポジウムで見出された共通軸、論点を見据えながら、引き続き各自の調査研究を進める。また、それらの個別研究で得られた知見を定期的に研究会・シンポジウムでの報告と議論、各自の研究成果公表(論文・図書の公刊、学会発表等)などを通じて共同研究にフィードバックする。なお、初年度の研究会・シンポジウムでは、本研究課題の研究代表者・分担者による中間成果報告を行ったが、今後は、それらの報告・議論を通じて見出された論点をより多面的に、かつ、より深く議論するために、代表者・分担者以外のゲスト研究者を報告者として招聘する計画である。また、代表者・分担者が本研究の成果の一部を含めて公刊する図書・論文を取り上げ、書評会も開催する計画である。
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