研究課題/領域番号 |
21H00482
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
片山 幹生 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (50318739)
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研究分担者 |
日比野 啓 成蹊大学, 文学部, 教授 (40302830)
本橋 哲也 東京経済大学, コミュニケーション学部, 教授 (20230047)
須川 渡 福岡女学院大学, 人文学部, 准教授 (50709566)
小川 史 横浜創英大学, こども教育学部, 教授 (60442159)
五島 朋子 鳥取大学, 地域学部, 教授 (80403369)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地域市民演劇 / 共同体演劇 / アマチュア演劇 |
研究実績の概要 |
当研究課題の初年度にあたる2021(令和3)年度には8人の研究メンバーが約30箇所で市民演劇活動の調査を行った。主な調査先としては、現代版組踊『鬼鷲~琉球王尚巴志伝』(沖縄県沖縄市、4月)、劇団演集『今度は愛妻家』(愛知県名古屋市、6月)、古事語り部座『歌劇ふることぶみ』(奈良県大和郡山市、9月)、劇団四紀会『なおちゃん』(兵庫県神戸市、8月)、岡崎藝術座、『琉球怪談』(沖縄県那覇市、9月)、劇団音芽『DRACULA Another Infection』(大阪府大阪市、10月)、タント演劇学校『オクラバン!』(石川県能美市、10月)、土田原中部小学校「崋山劇」(愛知県田原市、11月)、切山歌舞伎(山口県下松市、11月)、第38回股旅舞踊全国大会(岩手県遠野市、11月)、劇団わらび座『だってあなたの娘ですから』(秋田県仙北市、3月)などがある。21年度の交付金の繰越がでたので、その繰越金は2022年8月に片山と本橋の2名は、ドイツのバイエルン州で10年に一度開催されるオーバーアマガウ受難劇の取材費に充てられた。 当研究では外部に公開された研究集会を10月と3月の2回、Zoomを使ってオンラインで実施し、調査結果の報告を行った。6月27日に行われた日本演劇学会全国大会では「〈シンポジウム〉いま、臨界点にある演劇:「現代版組踊」から、演劇と地域、教育、産業を考える」を企画し、当研究グループ・メンバーの舘野太朗が司会を務め、片山幹生、鈴木理映子、畑中小百合の三名が発表を行った。12月4日に行われた日本演劇学会研究集会の〈パネル〉「ドラマか非ドラマか?―地域市民演劇としての俄を考える」では、当研究課題グループは三人の「俄」研究者を招聘し、当研究グループ・メンバーの畑中小百合が司会を務めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の調査方法は地域市民演劇の活動従事者への取材が中心となる。新型コロナ禍のため、取材を予定していた演劇公演の中止が相次いだが、このような状況下のなかで、8名のメンバーにより約30箇所の演劇の取材を敢行した。2022(令和4)年度には20箇所の演劇活動が取材されており、4年間の研究期間で80から100箇所の地域市民演劇の取材を行う見通しはたった。われわれの研究活動の本質である聞き取り調査による現地取材については、ほぼ想定していた通りに進捗していると評価していいだろう。当研究に必要な資料・文献の目録の作成と収集については、まだ体系的には行われていない。4年目にこの研究課題をベースとする論集を刊行予定なので、その論集のコンセプトが固まり、執筆する内容が確定次第、本格的な文献調査を行いたい。 研究成果のアウトプットについては、日本演劇学会の春の全国大会と秋の研究集会で、〈パネル〉をわれわれのグループが中心となり企画し、全国大会では沖縄の現代市民演劇について、研究集会では私たちのグループによる現地調査の成果の一部は、2022年3月に森話社から刊行された日比野啓編『「地域市民演劇」の現在─芸術と社会の新しい結びつき』のなかで論考として発表されている。この論集には当研究グループのメンバーから、日比野啓、本橋哲也、鈴木理映子、舘野太朗、片山幹生、畑中小百合の6名が寄稿している。 調査のアーカイブのウェブ公開については、グループ内で継続中の調査報告を公にするにあたっては慎重に検討すべきという意見が出て、現在は保留の状態なっている。
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今後の研究の推進方策 |
4年の研究計画のうち2年が経過して、われわれの研究の方向性についてグループ内で再検討が行われた。研究計画調書には「1990年代以降の地域市民演劇の活動を包括的にとらえ、その全体像を提示することを目指している」と記したが、現代日本の地域市民演劇の規模と多様性はわれわれが想定していたよりもはるかに広大で多様であり、4年間の研究期間で、研究協力者を含め8人のメンバーだけで「包括的」にその状況をカバーし、記述することを目指すことが非現実的であり、思わしい研究成果を得ることが難しいことが確認された。今後は4年目に刊行予定の論集の内容を想定したうえで、より戦略的に調査対象を絞って研究を行うことになった。研究調査調書では「従来のアマチュア演劇研究では検討の対象から外れるような演劇活動」もわれわれの研究対象に含まれていることを本研究の独自性として挙げている。これまでの研究調査で、われわれは1980年代以降の地域市民演劇の変容を調査しているはずなのに、「地域市民演劇」ではなく「新しい(民俗)藝能」と呼んだほうがいいものに数々出会う機会があった。今後は「新しい(民俗)藝能」をキーワードに調査対象を選定し、研究を進めてきたい。 研究方法はこれまでと変わらない。研究協力者も含め原則として二人一組で公演を観に行き、その前後に関係者への取材を行う。研究メンバー全員が集まり、実地調査を行う 「総見」は、2023(令和5)年度は6月に、愛媛県の坊ちゃん劇場を取材し、『KANO 1931 甲子園まで2000キロ』を観劇する。メンバーの調査結果を発表する研究集会は、23年度も9月と3月の2回行う予定である。
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