研究課題
出張に制限がかかっていた期間がほとんどであったため,学内および札幌市内で採集が可能な試料から重点的にサンプリングを行った。結果的に,北海道内8箇所の考古学的遺跡から出土したマダラ41点,キタオットセイ54点,計95点の骨(マダラの一部に耳石をふくむ)のサンプリングを完了した。このうち,38点の炭素・窒素・酸素同位体分析,5点の放射性炭素年代測定を実施した。同位体分析を実施した試料が道北のオホーツク文化のものにほぼ限られていることから,遺跡内の層位を考慮したとしても現時点で環境変化や海洋生産性の時間的推移を示すような明確な手がかりはえられていない。ただし,2021年度に採取することができたサンプルの中には他の時期の試料も数多く含まれているため,次年度以降に分析を継続して実施する。年代測定は,海獣骨が非常に新しい時期の混入ではないことを確認することを目的として実施したが,測定した試料についてはすべて2000yBPから3000yBPの範囲内におさまっていた。海洋リザーバー効果の影響を強く受けていることを考慮しなければならないとしても,オホーツク文化かそれよりも古い資料であることが裏付けられるため,本研究の目的にとって適した試料であることを確認することができた。また,キタオットセイ54点からはDNAの抽出に成功し,種同定を完了した。このほか,最終的なサンプリングにまでは至っていないものの2遺跡の出土資料について予備調査を実施し,サンプル採取資料の選択と記録作業を行った。なお,本研究であわせて採取したニホンアシカのサンプルは2022年度から米国ワシントン大で古代DNA分析と同位体分析を実施する予定であり,現在,試料の輸出について関係国の法律に基づいて準備を進めている。国内で実施できないマダラの古代DNA分析はカナダのサイモンフレーザー大で分析を開始し,抽出に成功した段階にある。
2: おおむね順調に進展している
出張に制限がかかるなかにあっても学内でアクセスが可能な資料から優先的に作業に取りかかったことにより,初年度に想定していたサンプル数は十分に確保することができた。また,同位体分析や古代DNA分析については初年度であるがゆえに手探りの部分があったが,信頼性の高い結果をえることができたため,次年度以降の分析についても見通しを立てることができた。
札幌で採取できるサンプルは基本的にすべて確保することができたため,今後は札幌以外に保管されている資料のサンプリングを重点的に実施する。同位体分析は,対象資料を時期的にも空間的にもひろげ,海洋生産性の変化をとらえることを目指す。海獣の古代DNA分析は,ロシア,アメリカで公表されている分析結果と比較することで遺伝的距離を測定したうえで,集団構造などさらに踏み込んだ考察が可能かどうかを見極める。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
様似郷土館紀要
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https://hokudai-koko.sakura.ne.jp/