研究課題
感染症感染拡大にともなう行動制限により2021年度は予定していたサンプルの採取が十分にできなかったが,2022年はそうした制約が大幅に低下したため,2021年度に採取できなかったサンプル採取を2022年予定分と合わせて実施した。これにより,本プロジェクトで必要となるサンプルは,概ねすべてを採取することができた。2022年のサンプル採取対象は,貝取澗2洞窟(せたな町),トーサムポロ湖周辺竪穴群・弁天島(根室市),青苗貝塚・青苗砂丘(奥尻町),天寧1(釧路町),東釧路貝塚・幣舞(釧路市),大川(余市町),ホロベツ砂丘・枝幸港(枝幸港)の11遺跡である。これらの遺跡から出土した鰭脚類,マダラ,貝類について,計198個のサンプルを確保することができた。また,動物骨のコラーゲン抽出方法が,同位体分析や年代測定にどのような影響を与えるかについての検証も行った。具体的には,2021年度に実施した海獣骨の同位体分析や放射性炭素年代測定においては,アルカリによる洗浄後に酸による脱灰を行ったうえでコラーゲン抽出を実施した。2022年においては,同じ海獣骨からサンプルを再採取したうえで,前年度とは逆に酸による脱灰後にアルカリによる洗浄を行ってコラーゲンを抽出し,窒素・炭素・酸素安定同位体と放射性炭素年代を再測定した。このようなコラーゲン抽出方法の違いが分析結果に与える影響は,本研究の分担者が魚骨を用いてすでに行っている。しかし,動物骨についてはこれまで詳しい研究例がないため,基礎的な研究として貴重な実践例になると思われる。
2: おおむね順調に進展している
2021年度は,行動制限のため予定していたサンプリングの大半が実施できなかったが,2022年度にその遅れを取り戻すことができた。本プロジェクトで必要なサンプルは概ね採取することができたため,次年度以降はそれらの分析に集中することができる。
2022年度までに採取したキタオットセイ,ニホンアシカ,マダラ,貝類の窒素・炭素・酸素同位体分析およびDNA分析を実施し,一部の試料については年代測定も実施する。これにより,北海道の沿岸で時期・地域によって海洋生産性や鰭脚類・大型魚類の集団構造に差がみられるかどうかを検討する。また,海洋生産性の低下が疑われる時期があれば,古環境の研究成果や考古学的な人口変動とも対比し,将来的に因果関係の検討ができるようにまずは相関性について検討する。方法論的な課題として,異なる骨コラーゲンの抽出方法が同位体分析や年代測定にあたえる影響を評価する基礎的な研究も実施する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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https://hokudai-koko.sakura.ne.jp/research-project/