研究課題/領域番号 |
21H00588
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高瀬 克範 北海道大学, 文学研究院, 教授 (00347254)
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研究分担者 |
大河内 直彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門, 部門長 (00281832)
西田 義憲 北海道大学, 理学研究院, 研究院研究員 (10281841)
蔦谷 匠 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (80758813)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 北海道 / 海洋生産性 / キタオットセイ / マダラ / DNA分析 / 同位体分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,考古学的な遺跡から出土した動物の骨のDNA分析と炭素・窒素・酸素同位体分析を利用して,北海道沿岸における過去数千年間の海の豊かさ(海洋生産性)の変遷を明らかにする点にある。2020年度から2022年度にかけて,北海道各地で必要なサンプルを採取した。並行して分析・測定もすすめており,2023年度までに北海道北部(6遺跡,キタオットセイ33個体,マダラ14個体)および東部太平洋側(5遺跡,キタオットセイ18個体,マダラ25個体)のサンプルの分析・測定を終了した。現時点での結果では,すべての同位体において地域間・種のあいだの連動性は低く,とくにキタオットセイでは安定同位体比のばらつきが大きく,時間的・空間的な一貫性に乏しい。これはキタオットセイの広い回遊範囲に起因している可能性があるが,回遊範囲がより狭いマダラは北海道内の細分地域内でのばらつきが小さく,時間的な推移をより明瞭に反映している可能性が見出された。とくに,北海道東部の太平洋沿岸では,2400年前よりも古い段階(縄文文化後期・続縄文文化)からオホーツク文化後期以降(9世紀以降)の新しい段階にかけて窒素同位体比の値が低下しており,新しい段階で海洋生産性が低下していた可能性が示唆された。また,キタオットセイの遺伝学的検討では,道北と道東太平洋側のあいだでハプロタイプの組合せに違いが見られたものの,分子系統解析の結果では両地域のあいだに遺伝的に大きな差異はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道北部(6遺跡,キタオットセイ33個体,マダラ14個体)および東部太平洋側(5遺跡,キタオットセイ18個体,マダラ25個体)の遺跡から出土したサンプルは分析を終了することができた。これにより,まだ課題は残るものの,時間的,空間的な同位体の傾向を一定程度把握することができ,集団構造の変化の有無についても見通しを得ることができた。また,これらの分析結果を学会での口頭発表や研究ノートの形で公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,まだ実施できていない北海道の日本海側の遺跡(大川遺跡,青苗砂丘,青苗貝塚)から採取したマダラのサンプルの同位体分析を実施する。また,これまでの分析結果とその意義について,海洋と人類の関係に関する国際的な学会である第10回Oceans Past Initiative(イギリス)で口頭発表を行う。さらに,道東太平洋側でみられたオホーツク文化以降の窒素同位体比の低下が何を反映しているのかを詳しく調査するために,マダラのアミノ酸同位体分析も実施する。
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