研究課題/領域番号 |
21H00590
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
前田 修 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20647060)
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研究分担者 |
内藤 裕一 一般財団法人電力中央研究所, 原子力リスク研究センター, 主任研究員 (10754848)
小高 敬寛 金沢大学, GS教育系, 准教授 (70350379)
早川 裕弌 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (70549443)
下釜 和也 千葉工業大学, 地球学研究センター, 研究員 (70580116)
三木 健裕 東京大学, 総合研究博物館, 特任助教 (30898309)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 考古学 / メソポタミア / 農耕集落 / 都市 / 前適応 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画のとおり、2022年8月27日から9月23日の4週間にわたり、イラク・クルディスタン地域スレイマニア県において土器新石器時代遺跡であるシャイフ・マリフ2号丘の発掘調査を実施した。紀元前6000年前後の文化層が検出され、土器、石器をはじめとする貴重な考古資料を獲得することができた。また、調査期間中にはUAVを用いた地形測量を実施し、遺跡立地環境の詳細な情報を得ることができた。 発掘調査によって出土した考古資料の分析からは、シャフリゾール平原南部における土器新石器時代集落の地域性が確かめられた。これは、すでに調査がされている近隣のシャカル・テペ遺跡でも確かめられていた事実であり、当該地域における都市化直前の時期において、これまで知られていたザグロス山麓の新石器文化伝統とは異なる物質文化の伝統が存在したことがあきらかになった。 また、2023年2月に、本研究課題の研究協力者であるマンチェスター大学の研究者が来日し、シャカル・テペ遺跡、シャイフ・マリフ遺跡から出土した黒曜石製石器の産地同定分析を実施した。携帯型蛍光X線分析装置を用いた分析によって、遺跡から出土する黒曜石のほとんどが南東アナトリアの原産地から運ばれてきたものであることがあきらかになり、これらの遺跡と北方地域の交流の実態があきらかになった。 3月には、研究分担者数名が現地に収蔵されている出土資料分析のため再度イラク・クルディスタンに出向き、2週間ほど滞在して土器の分析を実施した。 本年度の研究成果は、日本西アジア考古学会第30回発掘調査報告会で口頭発表するとともに、Ancient Civilizations and Cultural Resources誌において論考を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響でフィールドワークをおこなうことができず、予算を繰り越して発掘調査を延期していた。今年度は、当初の調査計画を見直し、昨年度と本年度の2年間の計画でおこなう予定であった調査をまとめて実施することができた。これにより、当初の予定通りの成果を上げることができたとともに、今後の研究に必要な考古資料を十分に得ることができた。研究組織内のメンバーで分担して実施している土器、石器の分析、黒曜石の産地同定分析、放射性炭素年代測定、地理情報分析もすべて予定通り進んでおり、ここまで、研究期間の1年目、2年目に計画していた資料分析はすべて順調に実施している。 また、研究分担者らと研究会を実施するとともに、ここまでの研究成果の公表も予定通り進んでおり、学会発表および学術雑誌において研究成果を公表することができた。イギリスの研究者との共同研究の成果は、国際学会で発表し、現在は学術雑誌に投稿する共著論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、当初の計画通り、イラク・クルディスタン地域での土器新石器時代遺跡の発掘調査と出土考古資料の分析を中心に研究を進める。発掘調査では、シャイフ・マリフ2号丘の調査は本年度の調査でおおかた終了したため、隣接するシャイフ・マリフ1号丘の発掘を実施する。8月から9月にかけて調査を実施し、2号丘と同時期の文化層を検出し、物質文化の様相をあきらかにする。出土考古資料の分析も継続して実施し、研究成果を順次公表する。 また、地理情報分析にさらに力を入れるため、熱赤外(温度)センサを備えたドローンを購入し、通常の写真測量に加えて、地表温度の空間分布撮影をおこなうことで、地表下の埋没物の違い、地下水や土壌湿度の違いなどを検出することを試みる。 マンチェスター大学の研究者との黒曜石産地同定の共同研究も継続して進めるとともに、ビチュメンの産地同定分析について、これまでの成果を研究論文にまとめる。
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