研究課題/領域番号 |
21H00603
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
山形 眞理子 立教大学, 文学部, 特任教授 (90409582)
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研究分担者 |
久保 純子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90275967)
徳澤 啓一 岡山理科大学, 学芸員教育センター, 教授 (90388918)
鈴木 朋美 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任研究員 (00778673)
深山 絵実梨 立教大学, 文学部, 特別研究員(日本学術振興会) (10801144)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 考古学 / ベトナム / オケオ遺跡 / 扶南 |
研究実績の概要 |
研究の初年度はコロナ禍のために現地調査を実施できない状況が続いたため、日本国内で実施できる分析を優先しながら、オンラインでベトナム側共同研究機関との討論と協議を重ねた。具体的な実績は以下の通りである。 (1)オケオ―バテ遺跡群出土サンプルの放射性炭素年代測定:ベトナム南部社会科学院から受け取っていた、メコンデルタのアンザン省オケオ―バテ(Oc Eo - Ba The)遺跡群から採取された炭化物・炭化材サンプルの放射性炭素年代を、日本のパレオ・ラボに委託して測定した。その結果はオケオ文化全体の編年を考える上で貴重なデータとなった。 (2)ベトナム語による共著論文執筆と発表:放射性炭素測定年代と発掘現場における層位的所見を照らし合わせて考察し、まずはベトナム国内に向けて発表する必要があると考えた。そこで海外研究協力者であるグエン・カイン・チュン・キエン(南部社会科学院)、研究代表者・山形眞理子、研究分担者・久保純子がベトナム語で論文を共同執筆し、ベトナムの考古学専門ジャーナルであるKhao Co Hoc誌2022年6号に掲載された。 (3)日本におけるシンポジウム開催:2021年12月には日本国内に向けて研究成果を発表することを目的に、東南アジア考古学会研究大会シンポジウムとして「扶南・林邑・真臘:編年の比較」をオンライン開催した。研究代表者・山形が研究発表「考古編年からみた林邑:ベトナム中部における古代国家の形成」を行い、扶南に関してはグエン・カイン・チュン・キエンがリモートで参加し、オケオ―バテ遺跡群の最新の発掘調査について講演を行った。 (4)現地調査再開: 2022年8月に渡航が可能となり、南部社会科学院にて対面でセミナー「オケオ―バテ考古学遺跡の新出資料と編年」を開催し、オケオ―バテ遺跡群の最新の発掘調査の情報についてベトナム側と共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は現地調査を根幹とする研究であるため、コロナ禍による影響を受けた。ベトナム側共同研究機関である南部社会科学院は、2017年以来実施していた南部アンザン省オケオ―バテ遺跡群の発掘調査を2020年に終了した。本研究の代表者と分担者は、その直後に始まる予定であった補足的発掘調査と出土遺物の整理作業への参加が決まっていたが、令和3(2021)年度中にベトナムに渡航することはできなかった。初年度に計画していた現地調査はすべて次年度以降に延期せざるを得なかったが、コロナ禍発生の直前に日本側に渡されていた炭化物・炭化材サンプルがあったため、それらの放射性炭素年代測定を日本のラボで行うことができた。その結果はオケオ-バテ遺跡群のみならず、オケオ文化全体の編年研究を推進するために非常に貴重なデータとなった。それを踏まえ、オケオ文化の年代に関する研究を研究代表者・山形眞理子と研究分担者・久保純子、さらには海外研究協力者であるグエン・カイン・チュン・キエンとグエン・クォック・マインを中心に推進している。日本国内ではシンポジウム(2021年度東南アジア考古学会研究大会「扶南・林邑・真臘:編年の比較」)を開催し、ベトナム側共同研究者をリモートで招聘し、カンボジアで調査を行っている日本人考古学者や東南アジア古代史の専門家も参加して情報交換と議論を行った。2022年8月には現地調査を再開することができ、南部社会科学院においてセミナーを開催した。ベトナム側と協議しながら現地調査の計画を再組織し、日本から動物考古学や考古地磁気学の専門家を招請し、より多方面からの研究を推進することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
ベトナム側共同研究機関である南部社会科学院との協議の過程で、コロナ禍の間に生じた幾つかの問題が明らかになった。本研究に影響する点として、2017年以降推進されてきたオケオ―バテ遺跡群の発掘調査によって出土した資料の整理作業が、調査を主宰したベトナム社会科学アカデミーの方針によって、まだ本格的に始められていないという問題がある。そこで本研究では三つの方針にしたがって対応する。第一に、オケオーバテ遺跡群出土遺物のうち、南部社会科学院がホーチミン市に移している資料の分析を優先すること。第二に、オケオ―バテ遺跡群との比較研究を目的として、カントー市ニョンタイン遺跡を新たに調査対象とすること。第三に、扶南と林邑、さらには真臘との考古編年の対比を目標とし、ベトナム中部とカンボジア内陸部の遺跡で出土するオケオ関連遺物を調査すること。具体的には以下のような方針を策定した。 (1)南部社会科学院が収蔵するオケオ―バテ遺跡群出土資料の分析:研究代表者・山形眞理子と海外研究協力者であるグエン・カイン・チュン・キエンが、オケオ-バテ遺跡群とカンボジア・シェムリアップの鉄器時代遺跡、ベトナム中部のチャンパ遺跡との比較研究を進める。さらに、日本から動物考古学の専門家を招聘し、オケオ―バテ遺跡群出土動物骨の分析を開始する。日本から考古地磁気学の専門家が参加して、オケオ―バテ遺跡群から採取したレンガの分析を行う。 (2)カントー市ニョンタイン遺跡の試掘調査:ニョンタインはオケオ文化の居住遺跡であり、従前よりオケオ―バテ遺跡群との比較研究が必要とされていた。本研究の研究代表者・分担者全員が試掘調査に参加する。山形眞理子と徳澤啓一が土器研究、鈴木朋美が遺構・遺物の3Dモデル化、深山絵実梨が出土装身具研究、久保純子が土壌堆積物分析のためボーリング調査を行い、多方面から扶南の居住遺跡の実態解明を目指す。
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