研究課題/領域番号 |
21H00607
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部学芸課, 課長 (10250375)
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研究分担者 |
小林 謙一 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 客員研究員 (70110088)
高松 淳 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 客員教授 (90510884)
諫早 直人 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80599423)
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 総括研究員 (90421916)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 甲冑 / 製作技術 / 生産組織 / 三次元データ分析 / 古墳時代 |
研究実績の概要 |
本研究は、1.精密な三次元計測データを基礎とした甲冑各部品の形状・法量比較による設計単位の識別。2.詳細な観察に基づく製作技術の検討。3.復元実験による製作技術の検証。を三位一体として、甲冑製作の実態にせまり、さらにこれを基礎に生産組織の実態解明をおこなうものである。令和3年度の実績は以下の通りである。 1.甲冑基礎データの収集(島根県月坂放レ山5号墳、石川県雨の宮1号墳、西山3号墳出土甲冑の熟覧/宮崎県六野原8号地下式横穴墓、小木原3号地下式横穴墓出土甲冑の写真撮影)。 2.甲冑の三次元計測は、奈良県(市尾今田1号墳、兵家12号墳、新沢千塚115号墳・139号墳・281号墳・508号墳、高山1号墳)、島根県(月坂放レ山5号墳)、富山県(谷内21号墳、イヨダノヤマ3号墳)、石川県(雨の宮1号墳、柴垣円山1号墳、後山無常堂古墳、下開発茶臼山9号墳、和田山5号墳)出土資料について実施した。内訳は、短甲12(方形板革綴短甲1、長方板革綴短甲3、長方板三角板併用革綴短甲1、三角板革綴短甲4、三角板鋲留短甲1、横矧板鋲留短甲2)、衝角付冑3、眉庇付冑4である。 3.短甲の特徴的な部品、後胴竪上第2段の三次元データを、測地線距離と多次元尺度法を用いて二次元展開するプログラムで平面化する作業を進めた。 4.先の科研(「古墳時代中期における甲冑生産組織の研究-「型紙」と製作工程の分析を中心として-」JSPS KAKENHI 26284128)での三次元計測成果も援用し、長野県飯田市石行2号古墳出土短甲の分析・研究をまとめた(「飯田市新井原古墳群・石行古墳群出土甲冑の研究(1)-石行2号古墳の三角板鋲留短甲について-」長野県考古学会誌162号所収)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
三次元計測については、本研究開始以前に熟覧が完了していた資料が多くあり、予定計測数量を確保することができた。ただし、コロナ禍の影響により、計測時期が期間内後半以降と遅れ、計測データの詳細分析までには至らなかった。また、今後の三次元計測に先立つ資料の詳細調査についても同様で、3年度中、ほぼ他地域での新たな資料調査が実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、すでに多くの計測対象資料の熟覧を終えている静岡県内出土甲冑(未調査の計測対象短甲2領の熟覧を先におこなった上で実施)を最優先として三次元計測を実施する。 これまで計測データが1領(福岡県稲童15号墳出土例)だけであった方形板革綴短甲について、新たなデータ(石川県雨の宮1号墳出土例)を取得でき、定型化(帯金式甲冑)に至る前段階である古墳時代前期の甲冑の分析も視野に入ってきた。4年度以降、奈良県出土例も含め取得データ数を拡充し、研究期間中に比較分析を具体化していきたい。
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