研究課題/領域番号 |
21H00611
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
長柄 毅一 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (60443420)
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研究分担者 |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 客員教授 (20181969)
廣川 守 公益財団法人泉屋博古館, 学芸課(本館), 館長 (30565586)
佐藤 朗 大阪大学, 理学研究科, 助教 (40362610)
南 健太郎 岡山大学, 埋蔵文化財調査研究センター, 助教 (60610110)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 古代青銅鋳物 / 鋳造方案 / 鋳造シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は、人類の技術水準を各段に引き上げた革命的技術ともいえる鋳造技術の詳細を明らかにすることを目的に実施するものである。特に殷周青銅器に代表される古代中国の青銅鋳物は、複雑な形状と表面の精緻な文様が特徴であり、人類史上でも稀なる極めて高度な超絶技巧の特徴ともいえる。鋳造技術は、金属を融点以上に加熱して熔解し、液体状態の金属(熔湯)を石や砂で作った鋳型の空洞に流し込み、所定の形状を得る金属加工技術であり、高温・液体状態の金属を扱うため危険で難しい作業を含んでいる。「どう工夫して鋳造したのか」という問いの答え、すなわち古代における注湯温度、速度、鋳込み角度、鋳型温度などの技術上ををすべて解明することが最終目的である。 初年度は、まず、日本の古墳時代において重要な役割を果たしたと考えられている青銅鏡「三角縁神獣鏡」を中心に研究を実施した。三角縁神獣鏡の鋳造工程には多くの研究者が関心を持っており、復元鋳造なども試みられている。出土鏡の外観観察から、堰の位置などが検討されているが、鋳型が出土していないことで、詳細な鋳造方案は謎のままとされている。そこで、まず、三角縁三神二獣鏡(泉屋博古館蔵)から3Dスキャナによってデジタルデータを取得し、鋳造シミュレーションを実施した。この際、リバースエンジニアリングソフトウエアで、加工時削り取られたと考えられる鏡面の厚みの復元と鋳引け等による欠損を予め修復して鋳造解析に供した。その結果、湯流れの状況と凝固過程を明らかにすることができ、堰位置を推定するための根拠を提示することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスのパンデミックに伴い、国内、国外ともに外出が制限され、十分に青銅器のデジタルデータを取得することができなかった。しかし、過去の研究において採取してきた古代の鋳物のデジタルデータは十分にあり、研究を進めることができた。取得する予定であった3Dデータについては、今後、作業を回復していく予定である。また、復元鋳造によって制作した鏡についても成分分布の評価をおこなうことができたが、本年度は、より多くの鋳造条件における復元鋳造も実施し、鋳造欠陥の出現状況や成分分布に及ぼす影響について調査を進めていく予定にしている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、新型コロナウイルスの感染状況によっては、自由に国外で調査することが困難であると予測されることから、主に、国内の鋳物のデータ収集ならびに、鋳造解析を進めていく。また、出土時に欠損の見つかった資料に関しても、リバースエンジニアリングソフトによってデジタル上での復元を実施し、鋳造シミュレーションによる鋳造方案の検討を行っていく予定にしている。 本研究における課題として、古代の青銅器の化学組成が、現代の鋳物の組成とは全く異なることに起因するものがある。鋳造シミュレーションにおいて、鋳物の成分は重要な要素となるが、熱物性値等のデータがソフトウエアのデータベースにはなく、できるだけ近い組成の規格を利用するしかない。そのため、JmatProのような金属物性値計算ソフトウエアを活用するなどしているが、そうしたソフトの使用限界を超える場合もあるため、場合によっては、特殊な組成のものについて、熱物性値の測定や計算を外注により得ることも考えている。
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