研究課題
2021年度の研究実績は以下の通りとなる。(1) 茨城県つくば市上境旭台貝塚、千葉県印西市馬場遺跡第5地点、神奈川県横須賀市吉井第一貝塚、鹿児島県いちき串木野市市来貝塚から出土したオオヤマネコ遺体群を所蔵機関より借用、肉眼による観察と計測、高精細撮影を実施し、マイクロCTによる三次元データを取得。それぞれ精巧なキャストを製作した。(2) うち上境旭台貝塚出の右大腿骨、馬場遺跡第5地点の左右側頭骨鼓室部、市来貝塚の左橈骨1点からは、所蔵機関の許諾を得て、必要な試料を採取し、放射性炭素年代測定、安定同位体比による食性解析、aDNAによる系統地理解析も進めた。既に得られた14C年代の測定結果から、上境旭台の遺体は縄文時代後期、馬場遺跡第 5地点、市来貝塚の遺体は縄文時代晩期の資料であることが確認された。数値年代を踏まえ、縄文時代晩期までオオヤマネコが本州から九州に至る広範囲な地域に生息していたことを明らかにし得た意義は大きい。(3) 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、新たに同種遺体を得るべく夏季に予定していた青森県下北郡東通村尻労地区での発掘調査は中止せざるを得なかったが、次年度の実施を目指すべく、関係機関との交渉を進めた。(4) 8月にはオンラインで開催された日本哺乳類学会2021年度大会で、「絶滅した日本オオヤマネコの学際的調査・研究」という題目で口頭発表を行い、本研究プロジェクトで計画されている調査・研究の計画とその意義を説明した。(5)本研究プロジェクトの成果を海外発信すべく、 ICAZ(International Council for Archaeozoology)の大会に参加、発表を行うための準備も進めた。
3: やや遅れている
既出オオヤマネコ遺体に関する理化学的分析については概ね順調に進んでいる。一方、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、新たに同種遺体を得るべく夏季に予定していた青森県下北郡東通村尻労地区での発掘調査は実施を断念せざるを得なかった。既に尻労安部洞窟出土資料を予備的に分析し、寒冷地にして日本有数の石灰岩地帯である尻労地区から出土する動物遺体の遺存状態は極めて良く、また、aDNAも良好に解析できることが確認されている。それだけに来夏、でき得る範囲での発掘調査を実施し、追加資料群を得る予定だが、それらの解析が一年遅れとなる事態は避けられない。
東通村教育委員会や地権者とも協議し、来夏確実に尻労地区での発掘調査を実施する。また、追加資料が得られた場合、可及的速やかに、肉眼による観察と計測、高精細撮影を実施し、マイクロCTによる三次元データを取得。キャストも製作したサンプリングを行い、順次放射性炭素年代測定、安定同位体比による食性解析、aDNAによる系統地理解析を進める。
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
PNAS
巻: 118(20) ページ: e2023005118
10.1073/pnas.2023005118
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https://web.flet.keio.ac.jp/~sato/shitsukari/index.html