研究課題/領域番号 |
21H00613
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 孝雄 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20269640)
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研究分担者 |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (10374943)
澤浦 亮平 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 協力研究員 (20816201)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
河村 愛 富山大学, 学術研究部教育学系, 講師 (60802460)
鈴木 敏彦 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (70261518)
増田 隆一 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80192748)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オオヤマネコ / 地域絶滅種 / 動物考古学 / C14年代測定 / 安定同位体分析 / aDNA解析 |
研究実績の概要 |
2022年度に実施した本課題に関する研究実績は大別して以下3点に纏められる。 (1) 2022年8月に尻労安部洞窟の発掘調査を実施し、稀少なオオヤマネコ遺体に追加資料を得た。うち左上顎犬歯については、照合の結果、過年度出土した左上顎骨と同一個体に由来することを確認した。犬歯の歯根がいまだ未閉塞な状態にあったことから、上記犬歯と上顎骨は生後10ヶ月未満の冬季もしくは早春の時点で死亡した個体に由来するとみて良い。縄文時代人のオオヤマネコ狩猟の猟季と目的を考える上で、この事実は示唆的と言える。 (2) 縄文時代に西日本に生息したオオヤマネコの系統解析をすすめるべく、福井県立歴史博物館と交渉を重ね、若狭町鳥浜貝塚出土同種遺体3点の借用許可を得た。いずれも縄文前期に帰属するとみられる同3点については、ゲノム解析に先立ち、マイクロCTでスキャニングし形態と組織構造の情報を記録するとともに、精巧なキャストも作成した。本州中部から出土したオオヤマネコ遺体のaDNA解析も行える見通しが立った意義は大きい。DNA抽出に成功すれば、縄文時代の日本列島に生息したオオヤマネコのポピュレーション・ヒストリーをより精緻に解明することが期待できる。 (3) 2023年8月に豪州ケアンズで開催されたICAZ(International Council for ArchaeoZoology)において、小野林太郎博士(国立民族学博物館)とともに、The Forefront of Zooarchaeology in Asian Coasts and Islandsというセッションを主催し、分担者らと連名で本課題の研究成果を発表した。同発表の内容には、複数の研究者達から関心が寄せられ、かれらと対話も重ねる中、北米やヨーロッパで勧められている同種に関する動物考古学的・古生物学的研究に関する有益な情報も得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため前年度見合わせた尻労安部洞窟の発掘調査も無事実施することができた。また、同じくコロナ禍により開催が延期されたICAZの大会も1年遅れで開催され、本研究課題の成果発表も行うことができた。本年度までに借用した資料群のaDNA解析も次年度以降に行える予定であるため、当初予定していた研究の進捗に大きな遅滞は認められない。
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今後の研究の推進方策 |
縄文時代に日本列島に生息したオオヤマネコのポピュレーション・ヒストリーを明らかにすべく、青森県東通村尻労安部洞窟、岩手県陸前高田市獺沢貝塚、茨城県つくば市上境旭台、千葉県印西市馬場遺跡第5地点、福井県若狭町鳥浜貝塚、愛媛県久万高原町上黒岩岩陰、鹿児島県いちき串木野市市来貝塚から出土したオオヤマネコ遺体についてaDNA解析を進めるとともに、成果を査読論文に投稿する準備を進める。
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