研究課題/領域番号 |
21H00619
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
河崎 衣美 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 主任研究員 (60732419)
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研究分担者 |
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10325938)
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
松井 敏也 筑波大学, 芸術系, 教授 (60306074)
片山 葉子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 客員研究員 (90165415)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生物劣化 / 煉瓦 / 文化遺産 / 微生物 |
研究実績の概要 |
本研究は文化遺産を構成する焼成煉瓦の劣化要因としてこれまではあまり注意が払われな かった、微生物による劣化機構を明らかにし、将来的に汎用的な劣化診断法の開発と劣化の 抑制につなげる情報を得ることを目的とする。特に深刻な劣化を引き起こす塩類の起源となる硝酸イオンや硫酸イオンを生成する窒素循環や硫黄循環に関わる化学合成独立栄養微生物と光合成独立栄養微生物に着目し、各微生物の機能に焦点をあてて煉瓦における劣化機構を解明する。さらに微生物による劣化の様相を判断し、認識するための手法を提案する。本研究により、これまで原因が明らかでなかった煉瓦の劣化に対する対策の対象を提示し、また 塩類生成の一端を担う微生物の関わりを明らかにすることによって、劣化抑制方法の選択肢を増やし、より個々の事例に即した保存の実現を目指す。初年度は研究の体制を整える期間と位置付け、研究体制を確立し、基礎研究として定めた、付着微生物の性質と劣化に関わる機能解明、煉瓦造文化遺産の劣化要因調査に取り組んだ。 調査対象の煉瓦造文化遺産における劣化生成物の遺伝子解析の結果、化学合成独立栄養微生物として窒素循環に関わる微生物を確認した。光合成独立栄養微生物について、固着・穿入するタイプの地衣類の調査から、共生藻の他に自由生活性(Free-living)藻類と地衣類との関連の可能性が見出された。劣化要因調査として調査対象の煉瓦造文化遺産の礎石砂岩表面に析出した塩類に対し、SrおよびS同位体比測定を行った。この結果、塩類の起源として煉瓦造文化遺産の構成材料である砂岩および地下水の可能性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた研究体制の確立だけでなく、国内の主な調査対象として定めた3ヶ所の煉瓦造文化遺産すべてにおいて調査を開始できた。加えて、基礎研究として定めた、付着微生物の性質と劣化に関わる機能解明、煉瓦造文化遺産の劣化要因調査についても予定以上に進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の調査成果を進展させ、さらに分析対象を広げることで研究を深化させる。特に、煉瓦造文化遺産における劣化生成物より見出された、窒素循環に関わる化学合成独立栄養微生物についてその機構をより詳細に調査する。光合成独立栄養微生物については、各微生物間の相互作用にも着目し、調査を進める。微生物以外の劣化要因として大きいと考えられた塩類風化に着目し、海外調査が可能な場合には調査対象を増やして煉瓦造文化遺産の事例調査を実施する。
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