研究課題/領域番号 |
21H00623
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 公益財団法人元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
川本 耕三 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10241267)
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研究分担者 |
大橋 有佳 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10804388)
大国 万希子 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, その他 (40250352)
木沢 直子 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (50270773)
桃井 宏和 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (50510153)
山田 哲也 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (80261212)
若杉 勇輝 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30954309)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 保存処理 / 出土木製品 / エックス線 / 実態調査 / 劣化 |
研究実績の概要 |
1.保存処理済み出土木製品の調査 厚みのある水浸出土木材を薬剤含浸処理すると遺物内層に水分が残留して亀裂や空洞が生じる例があり、保存処理終了後、経年変化による劣化の進行にともなって強度不足に陥る恐れがあることから、その実態を数か所の展示・収蔵施設で調査した。その結果、含浸処理に起因する可能性がある遺物内部の空洞は観察されなかったが、樹軸方向の亀裂は芯持ち材に多く見られた。現状ではそれらの遺物に強度不足はないが、劣化の進行を観察するため定期的な調査を行うことが望ましいと考えられた。 2.各保存処理法での亀裂や空洞の再現実験 出土流木を実験試料として亀裂や空洞を再現し、強度試験を行うことにより強度低下の実態を明らかにし、その亀裂や空洞を強化する方法を開発するため、ポリエチレングリコール法、脂肪酸エステル法、アルコール・酢酸ブチル・樹脂法による含浸実験を行っている。ポリエチレングリコール法では、50%程度の水溶液含浸時に遺物の変形や収縮が生じやすく、含浸により遺物全体が60℃以上に加熱され柔軟になったことで、生じた亀裂や空洞に落ち込み遺物外形が変形することがある。遺物外形を変形させないように含浸温度を抑制し亀裂や空洞を再現する。糖(糖アルコール)法では、トレハロース等の水溶液含浸濃度を低くして遺物内に水分を残留させ、乾燥時に亀裂や空洞を再現する。アルコール・酢酸ブチル・樹脂法や脂肪酸エステル法では、アルコール浸漬置換期間を短縮し、遺物内に水分を残留させ、薬剤浸漬置換時に亀裂や空洞を再現する。あわせて薬剤含侵を精度高く行うための卓上型含浸装置を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査が可能な調査対象遺物の数が少ないため、現地調査を多く行うことができない。 亀裂や空洞の再現実験に適した広葉樹で芯持ちの出土流木が入手しにくいため再現実験がすすまない。
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今後の研究の推進方策 |
保存処理済み出土木製品の調査の遅れを取り戻すべく多くの収蔵施設を訪れ、また、保存処理実験による亀裂や空洞の再現実験を着実に進める。
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