研究課題/領域番号 |
21H00629
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
高田 将志 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (60273827)
|
研究分担者 |
横山 祐典 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10359648)
豊田 新 岡山理科大学, 古生物学・年代学研究センター, 教授 (40207650)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 風成堆積物 / 陸域環境急変期 / 第四紀後期 / ユーラシア大陸東西 / 火山灰土 / レス |
研究実績の概要 |
本研究では、日本列島各地に分布する後期更新世~完新世火山灰土の連続サンプリングを行い、各種古環境指標の分析に基づき、そこから読み取ることのできる高解像度(100~1000年スケールの)陸域古環境変動を明らかにすることを目指している。併せて、ユーラシア大陸西部のレス試料についても同様の解析を行い、既存研究で指摘されてきた同時期のグローバルな環境変動とを比較することで、陸域環境急変期にみられるグローバルな変動とローカル・リージョナルな変動の識別を試みたいと考えている。 2022年度は、栃木県で採取された火山灰土試料の分析を前年度から継続して進めた。火山灰土試料に含まれる微細石英のESR信号測定からは、地表面から50cmまでの試料についてはE1’中心信号が検出されなかったが、下位層準の試料からはE1’中心信号が検出され、とくに、最終氷期中に堆積した火山灰土試料にふくまれる微細石英の酸素空孔量が大きくなるという結果が得られた。このような分析手法を用いて、風成塵の起源と関連する気候変動を議論できる可能性があるとの見通しを得ることができ、これらの結果をESR応用計測研究会(2022年度合同大会)において口頭発表した。また、青森県上北平野地域で採取した火山灰土試料についても、同様の各種分析・解析を進めるための作業を開始した。 なお12月初旬に発生した研究代表者の予期せぬ怪我のため、2022年度後半に予定していた一部の現地調査が実施できなかった。このため2023年度前半に、未実施となった現地予備調査を鳥取県倉吉市とその周辺域で実施した。しかしながら、当該地域の露頭状況が想定以上に思わしくなく、中期更新世末~後期更新世~完新世の連続した火山灰土試料を採取可能な適地を見出すことができなかった。このため、今後、他の地域も含めた火山灰土試料採取のための戦略について再検討することとしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年5月までCOVID-19感染症の影響がつづき、2022年12月~2023年4月の間、研究代表者が左足脹脛筋肉断裂により長期に歩行に支障が生じたため、野外調査や室内実験計測作業に遅れが生じることとなった。2023年5月以降、遅れが生じた前述の工程を加速させてすすめるように努めているものの、現時点ではまだ、遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
12月初旬に発生した研究代表者の予期せぬ怪我のため、2022年度後半に予定していた一部の現地調査が実施できず、2023年度前半に、未実施となった現地予備調査・第1次調査を三瓶火山・大山火山の火山噴出物が数多く堆積している鳥取県倉吉市とその周辺域で実施した。しかしながら、当該地域の露頭状況が想定以上に思わしくなく、中期更新世末~後期更新世~完新世の連続した火山灰土試料を採取可能な適地を見出すことができなかった。このため、2023年度から、他の地域も含めた火山灰土試料採取のための戦略について再検討することを考えている。 2021年度中に採取した青森県上北平野地域から採取した火山灰土試料については、2022年度から、栃木県で採取した試料と同様な分析・解析を進めるべく進行中で、今後もこれを継続する予定である。 上記に加え、これまで進めてきた粒度分析とESR信号計測に加え、火山灰土試料に含まれる各種鉱物の結晶化度の時系列変化についても検討を進めたいと考えている。すでに試料処理とX線回折測定を試行的にはじめており、一部、測定結果も得られつつある。ただし、結晶化度をもとにどのような解析が可能かについては、注目する鉱物種やX線回折データの具体的な分析解析方法について、さらに検討すべき課題がある。今後、この点についても既存研究なども参考にしながら、さらに検討をすすめてゆく予定である。
|