研究課題/領域番号 |
21H00642
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
西井 凉子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20262214)
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研究分担者 |
金 セッピョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 特任助教 (00791310)
丹羽 朋子 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 講師 (10753486)
田中 大介 自治医科大学, 医学部, 教授 (20634281)
加賀谷 真梨 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (50432042)
磯野 真穂 慶應義塾大学, 健康マネジメント研究科(藤沢), 研究員 (50549376)
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 名誉教授 (80153419)
土佐 桂子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90283853)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 死 / 身体 / 情動 / フィールド実践 |
研究実績の概要 |
本研究の核心的な問いは、死という個の時間的断絶をはさむことで、身体の変化がどのように集合性にアフェクトするか、つまり、一回性の生を生きる身体が、集合的なものにいかに接続されるのか、という問いである。このような問いに焦点化して、生きる「現実」を、死という断絶面から照射することによって、生の潜在性の現われを具体の場から捉えること、これが本研究の目的である。「こうありありえたかもしれない」という別様の生のあり方や、未来への予期、過去の出来事/記憶との相互浸透といった、複数の層の重なり合いまでも含めて捉えようとする。そうした視点により、生の「現実」を深く掘り下げることができると考える。具体的には、成果論集への執筆予定者がそれぞれ発表し、今後の草稿執筆にむけての準備のため、質疑応答を行い、論点の明確化に努めた。 それぞれのタイトル(仮題)は下記の通りである。 磯野真穂「死のエンハンスメント―コロナ禍を中心として」、田中大輔「COVID-19 の発生に対する葬儀業の初動と展開」、加賀谷真梨「生を司り、死を司る人々-池間島の高齢者が生きている時間」、丹羽朋子「喪明けに抗する展示-東日本大震災「メモリアル」施設における「形見分け」の実践」、金セッピョル「死を通して生に向かう―喪興小屋の軌跡から」、田中大介「COVID-19 の発生に対する葬儀業の初動と展開」、土佐桂子「SNSにおける「死」:クーデター・死にまつわる知らせ」、黒田末寿「アフェクトを拒否する世界からの反逆」、高木良子「死者の見顕し-現在日本におけるデスマスク政策を事例に」、瓜生大輔「葬儀中継(者の立ち振る舞い)のデザイン―撮影機器(カメラ)および、カメラを構える人を対象に―」、西井凉子「死の記憶と共同性-森に入った人々(タイの民主化運動)」以上。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各自すすめている研究を、研究チーム全体としてどのように評価し、どの方向性をより進展させる必要があるのかを、死の現場である東日本大震災の地において合宿形式でシンポジウムを行う予定であった。しかし、新型コロナ感染の広がりの影響で、受け入れの先方や分担者の所属組織の要請もあり、延期せざるをえなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究の着地点を明確にすべき段階にあり、年に3回程度の研究会とシンポジウムを行うことで、各自のフィールドから何が明らかになったのかについて、次のような項目について検討する。 <生> 医療や介護の現場からの死に向き合う実践を扱う。コロナ状況下においては、人工呼吸器やECMOの数が突如問題視され、死へを避ける語りがなされる。また、介護の現場においては、最期の時の迎え方について、「住み慣れた地域、住み慣れた家」というこれまでの生を送った場から死を考える。 <生と死の境界> 東日本大震災から12年経ち、被災者の経験した出来事や記憶はいかにして経験者自身の固有の出来事であり、同時に未来を生きる集合的出来事となるのか。映像作品や演劇など、「現実」の記録と「フィクション」の混成など経験を他者に伝えるための試みから、死者を考える。コロナ感染により、感染予防のためのガイドラインが、死者の葬儀のあり方に大きく影響を与えている。死者は通常の死者ではなく、医療の対象となり、死後の医療化がおきている現場からアプローチする。 <死> 死と死体の現場に関わって葬儀などを行う職能従事者の調査から、「よい死」に失敗した落伍者という枠組みに押し込められてしまいがちな人々の死と遺体の現実を調査する。葬式互助の仕事は、これまで交通事故にあってもケアされることがなかった死と死体と向き合うことになる。近年の新たな死をめぐる集合的な動きの現場から調査を行う。 <理論> 生物としての人間についての理論化を行う。多細胞生物は、胚が分裂して臓器に機能分化していく過程で過剰に増殖した部分をアポ トーシスで除く。こうした自己犠牲は、昆虫などにもみられる。人間の死をこのような生物としての死におくことでより広い視野において死と身体の問題を考える情動と死についての理論的とりまとめを行う。
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