超高齢多死社会を見据えた葬墓制システムの再構築：多様な生前と死後をつなぐために

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 21H00652
• 配分区分: 補助金
• 研究機関: 国立歴史民俗博物館
• 研究代表者: 山田 慎也 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (90311133)
• 研究分担者: 土居 浩 ものつくり大学, 技能工芸学部, 教授 (20337687) ; 朽木 量 千葉商科大学, 政策情報学部, 教授 (10383374) ; 金 セッピョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 特任助教 (00791310) ; 田中 大介 自治医科大学, 医学部, 教授 (20634281) ; 問芝 志保 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 外来研究員 (20840763) ; 谷川 章雄 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40163620) ; 瓜生 大輔 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任講師 (40635562) ; 鈴木 岩弓 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (50154521) ; 小谷 みどり 身延山大学, 仏教学部, その他 (50633294) ; 玉川 貴子 名古屋学院大学, 現代社会学部, 准教授 (60424321) ; 森 謙二 茨城キリスト教大学, その他部局等, 研究員 (90113282)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2025-03-31
• キーワード: 葬儀 / 墓 / 無縁 / 介護 / リビングウィル / 直葬 / 遺骨 / 孤立死

研究実績の概要

本年度は、新型コロナウイルス感染症の流行のため、研究計画の再検討を行い、実施できる課題についての洗い出しなどの対応にも時間をとられることとなった。そして今年度はリモートでの、打ち合わせと関連する課題の研究会を実施した。
無縁死者に関する全国アンケートについては、その内容の検討を行った。なかでも墓地埋葬法による火葬、行旅病人行旅死亡人による火葬、葬祭扶助の身寄りのない人の火葬など、公費による火葬と、最終的な無縁の死者の数値の確定については、行政における数値において取り扱いが難しく、質問項目の設定や範囲については検討をつづけることとなった。また行政における対応部署の情報収集を行って、全国調査の準備を進めていった。
また現地調査では、コロナ禍によってきわめて限定的な調査となった。とくに高齢者施設の調査は困難であり、千葉県の老人施設について可能な範囲での調査を実施できた。これは特別養護老人ホームであり、看取りまでの対応を行っているため、その後の葬儀やお別れ会も実施している施設である。そこでは故人と入所者との別れだけではなく、職員との別れが可能となっており、これによって職員のメンタルケアにも繋がっているということが看取できた。そのため、施設の設計段階から、多目的ホールは葬儀を行うことを想定し、可動式の間仕切りを設置して、祭壇を飾る式場スペースと葬儀の会食スペースに分けられるようにしており、コロナ禍以前は葬儀を行っていた。しかし、コロナ禍によって葬儀は実施されていない。
また葬墓制研究情報のプラットフォーム構築では、葬具関連の特許・実用新案データベースの作成に取り組んだ。特許庁編（1958）『特許分類別総目録』（明治18年8月―昭和31年12月）を素材とし、項目の検討や対象年など、データ作成の基礎的な情報項目の整理と検討を行い、調査項目を多様な観点から設定する必要があることがわかった。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現地調査に関しては、新型コロナウイルス感染症によって、当初予定していた調査はできないものがおおいが、延期をして調査を行ったり、調査地や対象を変更して対応している。

今後の研究の推進方策

アンケートに関しては、その内容を検討するとともに、すでに調査において知己となった地方自治体職員に相談して、行政としても負担なく対応しやすいアンケート方法について教示を受け、引き続き検討することとなった。この職員は、無縁死者の対応など福祉行政に長年携わっており業務内容を熟知しているからである。この対応によって少しでも回収率を上げることにつながっていくものと考える。

研究成果

• [雑誌論文] 引き取り手のない故人の葬送と助葬制度 (2022)
  • 著者名/発表者名: 山田慎也
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 27－58
• [雑誌論文] 戦後日本におけるカロート式家墓の普及とその多様化―霊園・石材事業者の資料をもとに― (2022)
  • 著者名/発表者名: 問芝志保
  • 雑誌名: 民具マンスリー 巻: 55－4 ページ: 1－15
• [雑誌論文] 新たな死の共同性 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小谷みどり
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 2－16
• [雑誌論文] デジタル時代の弔い方 (2022)
  • 著者名/発表者名: 瓜生大輔
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 17－36
• [雑誌論文] 人口移動と葬儀互助システムの形成 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大場あや
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 59－83
• [雑誌論文] 位牌・墓標と葬送 (2022)
  • 著者名/発表者名: 谷川章雄
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 86－108
• [雑誌論文] 両墓制の終焉と伝統の護持 (2022)
  • 著者名/発表者名: 朽木量
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 109－127
• [雑誌論文] 改葬制度の史的展開 (2022)
  • 著者名/発表者名: 森謙二
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 128－150
• [雑誌論文] 近代公共墓地の成立と変遷 (2022)
  • 著者名/発表者名: 槇村久子
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 152－177
• [雑誌論文] 昭和初期の「永代供養墓」構想 (2022)
  • 著者名/発表者名: 鈴木岩弓
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 178－202
• [雑誌論文] 希望は、納骨堂 (2022)
  • 著者名/発表者名: 土居浩
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 203－225
• [雑誌論文] 家墓と家墓批判の歴史社会学 (2022)
  • 著者名/発表者名: 問芝志保
  • 雑誌名: 無縁社会の葬儀と墓 巻: なし ページ: 226－245
• [雑誌論文] 単身化社会における葬送儀礼とつながりの形成 (2021)
  • 著者名/発表者名: 山田慎也
  • 雑誌名: 冠婚葬祭総合研究所論文集（令和2年度） 巻: 令和2年 ページ: 26－41
• [雑誌論文] 人々の終活行動と終活サポート事業の背景にあるもの (2021)
  • 著者名/発表者名: 玉川貴子
  • 雑誌名: 冠婚葬祭総合研究所論文集（令和2年度） 巻: 令和2年度 ページ: 50－60
• [学会発表] 現代都市社会と家墓の継承―神戸市の旧共有墓地を事例に― (2022)
  • 著者名/発表者名: 問芝志保
  • 学会等名: 國學院大學日本文化研究所研究会
• [学会発表] 新型コロナウイルス感染症の流行と火葬 (2021)
  • 著者名/発表者名: 山田慎也
  • 学会等名: 日本民俗学会
• [学会発表] カロートと遺骨観―戦後行政と霊園事業者による「指導」― (2021)
  • 著者名/発表者名: 問芝志保
  • 学会等名: 日本宗学会
• [学会発表] 「死と葬儀」の再省察：社会－文化研究の潮流を中心に (2021)
  • 著者名/発表者名: 田中大介
  • 学会等名: 葬送文化学会
  • 招待講演
• [学会発表] 地域の看取りをめぐる文化的デザインの構築 (2021)
  • 著者名/発表者名: 田中大介
  • 学会等名: 地域デザイン学会
  • 招待講演
• [図書] 無縁社会の葬儀と墓：死者との過去・現在・未来 (2022)
  • 著者名/発表者名: 山田 慎也、土居 浩編
  • 総ページ数: 260
  • 出版者: 吉川弘文館
  • ISBN: 9784642082068