研究課題/領域番号 |
21H00680
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高橋 百合子 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (30432553)
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研究分担者 |
飯田 健 同志社大学, 法学部, 教授 (50468873)
SONG JAEHYUN 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (70822617)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 移民 / 政治参加 / 政治意識 / 米国 / メキシコ / 在外投票 / フォーカスグループ |
研究実績の概要 |
2021年度は、2022年度に実施する、非正規移民を対象とした回答者主導型サンプリングを用いた大規模調査の準備となる、フォーカスグループ調査を実施した。具体的に、本研究課題では、在米メキシコ移民が多く居住する米国のシカゴ市、およびロサンゼルス市で、通常の調査で過少代表される傾向のある、女性、若年層、非正規移民に焦点を絞り、政治参加・政治意識に関してインタビューを実施した。シカゴにおいては、3月30日、メキシコ現代美術館の会議室において実施し、合計で26名の参加者があった。ロサンゼルス市では、上記3グループに加えて、メキシコ各州を代表する移民組織リーダーのグループも加わり、ハリスコ州会館で、5月13日から15日までの3日間で実施した。なお、ロサンゼルス市での調査には、メキシコの研究協力者が参加した。 フォーカスグループ調査では、①政治参加への関心、②政治制度への信頼、③コミュニティ関係、④教育や医療といった公共政策に関する認識、⑤メキシコとのつながりの5点に絞って、半構造化インタビューを実施した。その結果、シカゴ市、ロサンゼルス市ともに、(1)在米在住期間(20-30年)が長くても、メキシコへの関心は薄れることがなく、政治参加に多大な関心を寄せていること、(2)その一方で、在外での有権者登録の手続きが複雑なことと、選挙情報が不足していることが、政治参加を妨げていること、および(3)在米在住期間が長くなっても、メキシコの家族や友人と頻繁に連絡を取り合い、密な越境的ネットワークを形成していることが分かった。さらに、シカゴ市調査では、若者層が医療や教育のサービスに多大な関心を寄せ、社会問題解決のためにコミュニティ組織参加への関心が高いことが分かった。他方、ロサンゼルス市では、有権者登録手続きについてジェンダーギャップが大きく、女性がより大きな困難を感じていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、コロナ禍の影響により対面で実施するフォーカスグループ調査が難しくなり、2022年度へ繰り越して調査を実施することとなった。多くの在米メキシコ移民組織の協力をいただだくことができ、予定通りに調査を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度に実施したフォーカスグループ調査の分析結果を踏まえて、在米メキシコ移民の中でも、非正規移民を対象とした回答者主導型サンプリングを用いた大規模調査を予定している。この調査は、本科研の研究課題の中心となる調査であるが、非正規移民は、正規の移民としての法的地位を持たずに米国に滞在しているため、通常のサーベイ方法では調査することが難しい。具体的に、サンプリングフレームを検討する際に必要となる公式登録が存在しないことが問題となる。このため、非正規移民はアクセスが難しい集団(hard-to-reach population)とみなされ、代表性を有するサンプリングに依拠したサーベイを実施することが難しいとの事情がある。この方法論上の問題点を克服し、アクセスが難しい集団に対しての調査を可能とする方法が回答者主導型サンプリング(Respondent-Driven Sampling、以下RDS)である。 2022年度は、フォーカスグループ調査を実施したシカゴ市でRDS実施を予定している。具体的に、シカゴ市在住の在米メキシコ移民組織のリーダーの協力を得つつ、フォーカスグループ調査からえられた知見を参考にしつつ、①政治参加への関心、②政治制度への信頼、③コミュニティ関係、④教育や医療といった公共政策に関する認識、⑤メキシコとのつながり、の5点について、詳細な質問票を作成し、匿名で調査を実施する。このため、研究代表者の高橋は、シカゴ市に研究実施の拠点を移してRDS実施の準備に臨む予定である。
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