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2023 年度 実績報告書

不確実性の高い社会における地方政治への信頼の変動要因とその帰結の実証的解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H00684
配分区分補助金
研究機関関西学院大学

研究代表者

善教 将大  関西学院大学, 法学部, 教授 (50625085)

研究分担者 曽我 謙悟  京都大学, 法学研究科, 教授 (60261947)
小林 哲郎  早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60455194)
中谷 美穂  明治学院大学, 法学部, 教授 (60465367)
SONG JAEHYUN  関西大学, 総合情報学部, 准教授 (70822617)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードコロナ禍 / 地方政府 / 信頼 / サーベイ実験 / 大規模調査 / ビッグデータ / 知事
研究実績の概要

2023年度における主な業績は、以下の通りである。第1は、2022年参院選後に実施した大規模意識調査を用いた分析結果に関する学会報告、および、論文の執筆である。2022年参院選後に、都道府県レベルの自治体首長に対する支持ないし信頼の実態を明らかにすることを可能とする、大規模な意識調査をオンライン上で実施した。この大規模調査の中に含めていた投票意向(propensity to vote)と党派性に関する質問を用いて、有権者の「支持の幅」の実態を、党派単位のみならず都道府県単位でも明らかにした。そして、関西圏を中心とする維新の躍進の背後にあった意識構造などを、地方政治の実態と関連づけながら論じた。その成果の一部を、2023年度の日本選挙学会で報告した後に、論文としてまとめ、公刊する準備を進めた。

第2は、2021年度に実施した兵庫、大阪、愛知、東京の有権者を対象に実施した、意識調査を用いた分析結果に関する学会報告、および、論文の執筆である。2021年8月に、先に述べた4つの都道府県に住む有権者を対象とする意識調査をオンライン上で実施した。その調査に含めていたコロナに起因する「医療崩壊」について、その責任がどの主体に帰属されていたか、また、責任帰属意識は党派性とどのような関係にあるかについて実証的に分析し、政党に対する拒否意識と責任帰属が強く相関する実態にあることを明らかにした。この研究成果を論文としてまとめ、査読付き学術雑誌に投稿し、公刊する準備を進めた。

以上にくわえて、地方自治における公共交通に関する研究や、行財政改革への意識に関する研究も行った。これらの成果についても学会報告や学術論文として公刊するなどしている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初に計画していた通り、先行研究が明らかにしてきた以上に細かな地域の有権者の実態を把握可能な大規模意識調査を、2022年参院選後に実施することができた。この調査に加えて、2021年頃から蓄積してきた意識調査もある。2023年度は、これら複数の意識調査を用いた研究成果について、複数本発表・公刊することができた。以上より、本研究プロジェクトは、着実に進展していると評価できる。

しかしながら、その一方で、SNS(旧Twitter)の仕様変更など、計画当初には想定することができなかった様々な問題が浮上したことも事実である。さらに、コロナへの問題関心が急速に薄れてしまった。都道府県知事の存在感も、急速に低下した。これらの変動の結果、当初の計画通りに進めることができない問題が複数生じてしまった。研究プロジェクトの方向性についても、大幅に見直す必要性が生じている。これらを踏まえ、着実に進展はしているものの、「おおむね順調に進展している」と評価するにとどめた。

今後の研究の推進方策

上述した現状を踏まえ、本研究プロジェクトは、コロナ禍や不確実性に大きく拘るのではなく、広く、都道府県を中軸とする地方政治・行政に対する支持、信頼、党派性といった、有権者の政治意識の実態、およびその規定要因や意識変動の帰結を、引き続き、オンライン上で実施する大規模な意識調査の分析を通じて明らかにしていくことを目指す。

具体的には、コロナ禍以降、あるいは、それ以前から議論されている「地方首長の党派性」について、その実態解明を行うこととする。日本の地方政治は、国政には見られないいくつかの特徴を兼ね備えている。例をあげれば、複数の政党が同時に一人の候補者を支持する(いわゆる「相乗り」)、あえて政党所属を外し「無党派」となって選挙戦を戦う、などである。このような地方レベルの首長の選挙戦略が、人々の地方政治、さらには国政レベルの政治にいかなる影響を与えるかは、実は、ほとんど明らかになっていない。くわえていえば、有権者が首長の党派性をどのように認識しているか、という基本的事実さえ、我々はほとんど理解することができてない。したがって2024年度では、都道府県を中心とする地方政治という視点は維持しつつも、昨今の地方政治をとりまく未解明の現象について、その規定要因や帰結の分析も踏まえつつ、明らかにすることを目指す。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Attributing Responsibility and Partisanship during the Covid-19 Pandemic in Japan2024

    • 著者名/発表者名
      Okamoto, Kakeru & Masahiro Zenkyo
    • 雑誌名

      Social Science Japan Journal

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 2022年参院選における有権者の選択肢2024

    • 著者名/発表者名
      善教将大
    • 雑誌名

      選挙研究

      巻: 39(2) ページ: 105-117

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「わからない (Don’t know) 」選択のメカニズムとその対処法2024

    • 著者名/発表者名
      善教将大
    • 雑誌名

      社会と調査

      巻: 32 ページ: 22-29

  • [雑誌論文] Face detection, tracking, and classification from large-scale news archives for analysis of key political figures2024

    • 著者名/発表者名
      Girbau, A., Kobayashi, T., Renoust, B., Matsui, Y., & Satoh, S.
    • 雑誌名

      Political Analysis

      巻: 32(2) ページ: 221-239

    • DOI

      10.1017/pan.2023.33

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Anti-vaccine rabbit hole leads to political representation: the case of Twitter in Japan2024

    • 著者名/発表者名
      Toriumi, F., Sakaki, T., Kobayashi, T., & Yoshida, M.
    • 雑誌名

      Journal of Computational Social Science

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1007/s42001-023-00241-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 行財政改革に対する支持態度と共同体への負担2024

    • 著者名/発表者名
      Jaehyun Song
    • 雑誌名

      情報研究

      巻: 58 ページ: 1-13

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Does partisanship shape public support for suspending U.S federal gas tax? A survey experiment2023

    • 著者名/発表者名
      Uji, Azusa, Jaehyun Song, Nives Dolsak, and Aseem Prakash
    • 雑誌名

      PLoS Climate

      巻: 2(6) ページ: e0000163

    • DOI

      10.1371/journal.pclm.0000163

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 地方自治論から見る大阪の交通2023

    • 著者名/発表者名
      曽我謙悟
    • 雑誌名

      運輸と経済

      巻: 83(8) ページ: 61-67

  • [学会発表] 党派的な情報探索行動:日本を事例とする検証2024

    • 著者名/発表者名
      善教将大・大村華子
    • 学会等名
      日本選挙学会
  • [学会発表] Survey Modes and Survey Experiments: A Comparative Analysis between RDD2024

    • 著者名/発表者名
      Eto,Takeru, Ikuma Ogura, & Masahiro Zenkyo
    • 学会等名
      World Association for Public Opinion Research 2024 Annual Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 大規模フィールド実験による“一票の価値”効果の検証2024

    • 著者名/発表者名
      善教将大
    • 学会等名
      日本政治学会
  • [学会発表] 2022年参院選における有権者の選択肢2023

    • 著者名/発表者名
      善教将大
    • 学会等名
      日本選挙学会
    • 招待講演
  • [学会発表] コロナ禍における責任帰属と党派性の関係2023

    • 著者名/発表者名
      岡本駆・善教将大
    • 学会等名
      公共選択学会
  • [学会発表] 日本人は権威主義国の非民主的ナラティブに説得されるか2023

    • 著者名/発表者名
      小林哲郎・周源・関颯太・三浦麻子
    • 学会等名
      日本社会心理学会
  • [学会発表] Persuasiveness of undemocratic narratives from authoritarian states: the case of Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Yuan Zhou, Runta Seki, Tetsuro Kobayashi, & Asako Miura
    • 学会等名
      2023 American Political Science Association Annual Meeting
    • 国際学会
  • [図書] Mobile Communication and Online Falsehoods in Asia. Mobile Communication in Asia: Local Insights, Global Implications2023

    • 著者名/発表者名
      Davidson, B., Kobayashi, T.
    • 総ページ数
      324
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-94-024-2224-5

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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