研究課題/領域番号 |
21H00697
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
神谷 和也 神戸大学, 経済経営研究所, リサーチフェロー (50201439)
|
研究分担者 |
小林 創 関西大学, 経済学部, 教授 (10347510)
七條 達弘 大阪公立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40305660)
清水 崇 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (80323468)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 貨幣 / 実験 / ダブルオークション / 金融政策 |
研究実績の概要 |
まず、動学的貨幣オークションモデルに関し、前年度の実験の追加実験を行った。具体的には、前年度に行った初期貨幣保有が異なる4種類のトリートメントに加えて、初期貨幣保有分布が異なる2種類のトリートメントに関し実験を行った。つまり、追加実験ではこれまでに行った均衡貨幣分布に加えてもう一つの均衡貨幣分布および2種類の総貨幣量に関する実験を行った。また、これらのデータを使って、効率性、買い手数、市場価格に関し分析を行った。特に、非効率性について市場価格に関する非効率性と買い手・売り手数比率の非効率性に分解して分析を行い、その大小関係およびトリートメント間比較などによる非効率性の原因の特定を行った。また、売り手と買い手の行動の差についても分析を行った。その結果、両者には大きい差があることが分かった。つまり、ほとんどの買い手は単純かつ均衡戦略に近い行動をとるのに対し、売り手の行動は個々の被験者により大きい差があり、また多くの被験者は売り手の均衡戦略とは異なる行動をとることが分かった。各グループの効率性、買い手数、市場価格の時系列は、大きく変動しているが、その原因は上記の買い手と売り手の行動によることが判明した。 次に、実験途中で総貨幣量を変化させる実験を行った。つまり、貨幣量が2倍あるいは2分の1になることに関し、実物量(取引の効率性や社会厚生)にinertiaが発生するなら貨幣中立性が成立しない。つまり、貨幣量変化後の貨幣価値が変化前の貨幣価値に何らかの形で影響を受けるなら、中立性は成り立たない。実際、いくつかモデルによる実験では、貨幣量を減らす際には中立性が成立しないことが知られている。今後は、このデータを用いて、金融政策(特にその中立性)について分析することになる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍による貨幣量の中立性に関する実験の遅れを取り戻すことができた。また、動学的貨幣オークションの実験データを分析し、取引効率性について興味深い結果を得ることができた。これらより、研究は順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、まず動学的貨幣オークションモデルの実験論文を完成し投稿する。現時点において、論文はほぼ完成しており、表現など細部の調整のみを行う必要がある。また、貨幣量を実験途中で変化させる場合の実験データを使って、金融政策の効果に関する分析を行う。これに関しては、我々とは別のモデルを使った実験では、貨幣量を減らした場合の非中立性が報告されている。分析は途中ではあるが、既存の文献とは異なる結果を得られる可能性があり、重要な成果が期待できる。また、財政政策に関する実験に関し、実験設計を行う。また、可能なら財政政策に関する予備実験を行う。財政政策に関しては、この種の貨幣モデルでは実験が行われていない。特に、複数の均衡を持つモデルでは、財政政策により効率的な均衡が選ばれる可能性があり。成果が期待できる。また、この種のモデルでは、取引量や価格の時系列が大きく変動する場合がある。財政政策は、変動を小さくし安定させる効果を持つ可能性があり、この点でも成果が期待される。
|