研究課題/領域番号 |
21H00699
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅澤 翔之助 東京大学, 空間情報科学研究センター, 准教授 (50782380)
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研究分担者 |
小林 弦矢 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (00725103)
入江 薫 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (20789169)
橋本 真太郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (60772796)
中川 智之 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 嘱託特別講師 (70822526)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ベイズ統計 / 状態空間モデル / ロバスト統計 / 予測統合 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大規模データ解析で見受けられる実用上の問題点に着目し、それらを解決する効果的なベイズモデリングの方法論の開発を目指している。今年度は具体的に以下のような研究に取り組んだ。 (A) 外れ値に頑健なベイズモデリング: 現実のデータには外れ値が含まれることが多く、その影響で誤った統計的推測を行ってしまう危険性がある。まず、ロバ ストダイバージェンスと呼ばれる分布間の尺度を用いたベイズ推測の方法論を開発し、チューニングパラメータの適応的な選択を含めたベイズ的方法論を開発した。また、線形回帰モデルの枠組みにおいて、外れ値を適切に扱うことが可能な誤差分布を開発しその理論的な性質を明らかにした。さらにマルコフ連鎖モンテカルロ法による効率的な推定アルゴリズムも開発した。 (B) 新たな縮小事前分布のクラスの開発: 大規模データ内の異質な構造を適応的に捉えることが可能な縮小事前分布の方法論の開発を行った。特に正値デー タに対する縮小事前分布を新たに開発し、その理論的な性質の解明と効率的な計算アルゴリズムの開発を行った。 (C) ベイズ的予測統合手法: 複数の予測モデルをベイズ的に統合するアルゴリズムと理論に関する研究を実施した。特に、空間データ解析と異質な因果効果の推定に焦点を当て、状態空間モデルを用いた予測統合の枠組みを与え、統合手法の妥当性の理論的な検証および計算アルゴリズムの開発を行なった。 (D) ベイズ推測のための効率的な計算アルゴリズムの開発: ガンマ関数を含む統計モデルに対する効率的な計算アルゴリズムとして、一般的な積分表現を用いたデータ拡大法によるギブスサンプラーを開発した。また、多次元モデルで登場する行列一般化逆ガウス分布からの効率的な乱数生成手法を開発し、マルコフ連鎖モンテカルロ法の効率化を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
年度開始時に設定していたテーマに関して有効な解決策を与えることができた。また、研究を進める過程でいくつかの関連テーマにも同時に取り組むことがで き、当初想定していた範囲を超えた貢献を与えることができた。 (A)については複数の論文が成果として得られており、そのうち3本が査読付国際誌に掲載された。他にも、ロバストな確率分布の研究に関する1本の論文を査読付国際誌に投稿中である。(B)については、正値データに関する成果が査読付国際誌に掲載された。(C)については2本の論文が成果として得られ、うち1本は査読付国際誌に投稿中である。(D)については、ガンマ関数を含んだモデルに対するギブスサンプラーの開発の成果は査読付国際誌に掲載され、行列一般化逆ガウス分布に関する研究成果は査読付国際誌に投稿中である。 上記に関連した成果は参画メンバーが国内外の様々な学会で発表を行なっており、有益なフィードバックを受けるとともに、関連研究者とのネットワークを広げることができた。このように、2022年度もチーム全体として生産的に研究活動を進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在査読付国際誌へ投稿をしている論文については、査読者からの返答があり次第、要求に沿って改訂し刊行を目指していく。また、論文として完成していない研究については引き続き執筆を進めていく。今年度実施した研究を通して新しい研究テーマもいくつか見つけることができたため、来年度に一定の成果を出せる よう進めていく。さらに、昨年開催したシンポジウムを今年も開催し、関連する分野の研究者との交流をより活発化し、適宜共同研究を実施するなどして進めていくことを計画している。
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