研究課題/領域番号 |
21H00704
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
塩路 悦朗 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50301180)
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研究分担者 |
砂川 武貴 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (10747223)
湯淺 史朗 一橋大学, 経済研究所, 特任講師 (30876694)
森田 裕史 法政大学, 比較経済研究所, 准教授 (70732759)
片桐 満 法政大学, 経営学部, 准教授 (80909739)
日野 将志 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (30906920)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 長短金利操作 / 非線形モデル / マクロ経済学 / 財政政策 / 金融政策 / 国債先物オプション / 情報効果 / フォワードガイダンス |
研究実績の概要 |
2021年度中は研究代表者・分担者を合わせ査読付き国際的学術誌に4本の論文が採択・公刊された。国際学会で7回、国内学会・研究会で14回の報告を行った。 砂川は片桐との共同研究で、フォワードガイダンスに関する分析を遂行した。その特徴は同政策ツールを金融政策ルールの形に定式化することで、中規模ニューケインジアンモデルに取り入れることを可能にしたことである。同モデルの推計結果を国際学会で報告した。片桐はこのほかにも、高齢化が需要サイドの構造変化を通じて日本経済に及ぼす影響を多部門ニューケインジアンモデルを用いて分析し、成果を査読付き国際学術誌に公刊した。また為替介入の効果を小国開放経済動学モデルをベイズ推定することを通じて明らかにする研究を行い、成果を複数の研究会で報告した。日野は耐久財消費の駆け込み需要に関する研究を国内外7カ所で報告し、そこで得られた助言を基に研究をさらに深化させた。湯淺は資産価格バブルと金融政策の関係に関する理論研究を継続した。 森田は47都道府県データを利用してパネルVARモデルを推計し、高齢化が財政乗数を低下させることを明らかにした。その原因が高齢者の労働市場への参加制約にある可能性を理論モデルによって示した。また財政ニュースに含まれる情報効果を理論と実証の両面から検証した。財政ニュースに含まれるネガティブな経済状況に関する情報が不確実性の高まる局面で大きくなりうることを理論・実証の両面から示した。塩路は国債先物オプション市場の研究をさらに進めた。これまでは同オプションの価格に焦点を置いてきたが、分析の視野を取引量に広げた。原油供給ショックが国内ガソリン価格に与える影響の分析を進めた。また感染症と経済活動の間のトレードオフを分析した共著論文を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度中は全体で査読付き国際的学術誌に4本の論文が採択・公刊され、それ以外にも2本の論文が公刊されるという成果を挙げた。同様に重要なことは、これまでに遂行してきた研究の成果をもとに、合計21回の研究報告が行われたことである。これは2021年度におけるコロナ禍の影響の大きさを考えれば特筆すべき頻度である。このことはこれまでの研究活動が順調に進展し着々と実を結びつつあることを示すと同時に、これら学会・研究会に参加した専門家からの貴重な助言や情報を得ることを通じて、研究の質を一段と高いものにしていく機会を得たことを意味している。こうした機会を活かしていくことを通じて、今後とも研究が順調に進展していくことが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトは理論モデルの研究、新たな分析手法の開発、新たな時系列分析の3つに大別することができる。 理論モデルについて、次の研究を進める。(1)中規模DSGEモデルにフォワードガイダンスを導入する研究を継続する(砂川・片桐)。(2)資産買入れによる長期金利低下の為替レートを通じた波及経路に関する分析を継続する(片桐)。(3)長期の低インフレと財政の関係についての理論分析を行う(片桐)。(4)耐久財消費のライフサイクルモデルを拡張する研究を継続する(日野)。(5)資産価格バブルの発生と金融政策の関係に関する分析を継続する(湯淺)。 手法面では、非線形モデルの推定に用いるInversion filterと既存研究で線形モデルの推定のために広く用いられてきたKalman filterの比較研究を行う (砂川)。 時系列分析については、次の3つを実施する。(1)金融政策に関するイベントの周辺における高頻度の金利データと符号制約を組み合わせることで、金融政策による金利の変更が経済に及ぼす影響を純粋な金融政策の効果と情報効果に分割する(森田)。(2)産業連関表の情報に基づいて公共投資から恩恵を受けている産業を特定化し、その産業の株価の情報を用いて公共投資ニュースショックを捉える系列を新たに作成する(森田)。(3)公共投資に関するニュースが流れた日付に関するデータセットを更新し、公共投資ニュースショックがマクロ経済に与える影響を再推計する(塩路)。
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