研究課題/領域番号 |
21H00706
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 知也 京都大学, 経済研究所, 教授 (70283679)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 市場統合 / 嗜好の地域性 / 文化 / 共和分分析 / 地域経済圏 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下のように、基礎データの整備を中心に行い、構築したデータを用いて、暫定的な分析を行った。 1. 日本の地域間の嗜好類似性の操作変数を構築するために用いる、国立言語研究所による「日本言語地図」、および、江戸期街道網データのデジタル化を進めた。前者は完了し、(類似したパターンを持つ方言のクラスタリング等を施さない)暫定的な地域間の方言類似性指標を構築した。後者は、各都道府県により編集された「歴史の道調査報告書」のデジタル化を完了し、現在、その他の史料を下に、街道網の補完作業を行っている。 2. 青果物市場価格・家計調査・物流データについては、政府統計を用いてデータ整備を行い、各青果物品目に対する家計の支出シェアの類似性が高い(嗜好が類似した)地域間では、それらの品目の市場価格が共和分を持つことについて、暫定的な結果を得た。ここで、嗜好の類似性の操作変数として、(1)で計算した地域間方言類似性指標を用いた。研究成果は、ディスカッション・ペーパーとして公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の第一の目的は、回帰モデルにおける、主たる説明変数(地域間の嗜好類似性)に対する操作変数構築に向けたデータ構築であった。そのために、最も時間がかかる「日本言語地図」を終え、かつ、江戸期旧街道網のデジタル化を概ね終えたことで、概ね目標の成果を得た。コロナウィルス感染症の流行により、当初予定していた対面の共同研究ができず、分析面で若干の遅れが出たが、暫定的な分析結果はディスカッション・ペーパーとして公表できたことで、概ね計画通りに研究が進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降、以下のように研究を進める。 1) 本年度以降は、前年度にデジタル化した、285の日本語表現の個々について、方言の地域分布データを用いて、地域間の方言類似性指標を構築する。より具体的には、方言の地域分布が同様な表現について、K-means法により階層的なクラスタリングを行い、地域間嗜好類似性と最も高い相関を持つクラスタリングレベルを同定し、最終的な操作変数を構築する。また、江戸期旧街道のデジタル化を終え、旧街道経由の地域間の交通アクセスを用いて、地域間嗜好類似性について第2の操作変数を構築する。 2) 来年度以降は、共和分に基づく地域ペア間の市場統合度と、青果物市場データを用いた支出パターンに基づく地域間嗜好類似性の関係性について、「地域固有嗜好仮説」を検証する。特に、地域集計と操作変数定義の調整を中心に、回帰モデルの定式化を検討する。 3) さらに、日本の物流センサスを用いて、嗜好の地域性と地域経済圏形成の因果関係について検証する。具体的には、昨年度公表したディスカッション・ペーパーにおいて同定した、貿易に関して自律的な地域経済圏について (地域経済圏の自律性は、一 般的な構造重力モデルが示唆する貿易量に対する圏内貿易の大きさにより定義される)、圏内地域間の嗜好類似性を評価し、地域間貿易の、歴史的な嗜好形成に起因する成分を定量的に評価する。重力モデルの構造残差分解を行い、嗜好類似性起 因の推定バイアスを正確に特定することで、(2)の分析を補完する。
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