研究課題/領域番号 |
21H00712
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小西 祥文 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (40597655)
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研究分担者 |
牛島 光一 筑波大学, システム情報系, 助教 (80707901)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 新経済地理 / 交通と環境 / 統計的因果推論 / 準実験手法 / 気候変動対策 / 新しい環境経済学 |
研究実績の概要 |
2023年度は,申請書記載の目的【(A)~(C)】を達成するために,前年度までに整備されたデータを用いて実証分析を行い,中間的研究成果の発表と論文の執筆・WP化を行った.また前年度と同様に,【(D)】各研究プロジェクトで用いられた手法・方法論的知見の整理とより幅広い層への発信,【(E)】研究ネットワークを広げるための研究会の開催を行った. (A)経済地理と環境:前年度までに整備されたデータを用いて,日本における都市雇用圏(UEA)を分析単位として,1980~90年代に行われた中国四国連絡橋および高速道路建設が地方都市の人口・産業構造に与えた因果効果の推定を行い,同テーマの一つ目の論文をWP化した.(B)公共交通インフラと環境:前年度までに整備されたデータを用いて,日本における自動車需要の地理空間的異質性を特徴づけるパラメターを推定するとともに,推定された自動車需要を用いて1990~2015年の日本全体の交通由来のCO2排出量の経年変化の要因分解を行った.同テーマの一つ目の論文を学術誌に公刊した.(C)ライドシェアと環境:前年度までに整備されたデータを用いて,米都市へのライドシェア(Uber/Lyft)の参入が交通由来の大気汚染(NO2)水準に与えた因果効果を推定し,初稿を完成させた.(D)『経済セミナー』にてスタートした連載「新しい環境経済学」の全9回の論稿を執筆・公刊した.日本経済学会にて「DIDの計量経済手法の近年の展開 ~問題と対策~」と題する研究者向けの解説講演を行った.(E)若手研究者中心の「環境×実証ミクロワークショップ」を複数回開催.年度末にブリティッシュ・コロンビア大学のBrian Copeland教授,ハワイ大学の樽井礼教授,HECモントリオール大学のKatalin Springel助教授をお招きし「環境経済学の理論と実証に関する国際ワークショップ」を開催.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に記載したように,概ね予定通り完了させている.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は以下の研究活動を行う: (A)経済地理と環境:同テーマに関する一つ目のWPを学術誌の公刊に向けて改定・投稿するとともに,二つ目の論文の執筆・WP化を目指す.具体的には,1980~90年代に行われた中国四国連絡橋および高速道路建設が地方都市の人口・産業構造の変化を通じて大気汚染の地理空間的分布へ与えた影響に関する実証研究を進める.(B)公共交通インフラと環境:同テーマの二つ目の研究プロジェクトを進める.具体的には,脱炭素政策(炭素税)の分配効果と自動車需要の地理空間的異質性の関係性に注目し,前年度に推定された自動車需要を用いて,経済効率性と公平性の両方に配慮した炭素税還付のデザインについて定量的な検討を行う.(C)ライドシェアと環境:2023年度までに同テーマに関する実証分析と頑健性チェックは概ね済ませているが,今年度は,同論文のWP化と学術誌への投稿準備を進める予定である.それと同時に,本研究成果の一部を三菱経済研究所の研究図書『ライドシェアの経済学 ~経済と環境の経済実証の視点から~』として刊行する予定である.同図書では,ライドシェアの経済的特性,先行研究の結果,理論モデル等について体系的な整理を行いつつ,シカゴ市の詳細なトリップ(乗降)データを用いて記述統計的な分析を行った上で,本研究成果の一部と統合することで一般読者向けの解説図書とする予定である.(D)本研究課題の最終的な目的は,(A)~(C)の研究成果を踏まえ,実証ミクロ的な視点から既存の環境経済学の枠組み・体系に捉われない「新しい環境経済学」として総括的に再解釈・定式化することにある.そのための文献レビューや理論的整理を継続して行う.
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