途上国は多くの問題を抱えているが、その1つに、組織のマネジメント能力の低さがある。本研究では、途上国における組織の非効率さの原因やその向上のための支援策について、実証的な探求を試みる。具体的には、東アフリカのタンザニアにおいて、公共機関や企業に日本式カイゼンを導入することで、その組織的な能力の構築を試みる。JICA(国際協力機関)と議論を重ねていく中で、JICAプロジェクトとしてタンザニアでの日本式カイゼン導入とその効果測定のための研究に関して予算が下りることとなった。その準備のために、JICAの予算を用いて2023年度中にタンザニアに渡航し、現地において本調査の準備を行った。本調査は170社の企業を対象として、2024年8月に実施される予定である。JICAからの予算が下りたことで、科研費からは当初予定していた額の一部のみを用いての研究の遂行が可能となった。他方、タンザニアでの政府機関の研究を進める中で、各政府機関が担当する業務内容や対象地域の人口の異質性の大きさや、政府機関の「成果」の定量化が難しいことより、定量的な分析の限界も明らかになってきた。こうした問題を解決し、途上国の組織に関する研究をさらに進展させるため、樋口がもとより共同研究歴があり調査を実施することが可能なベトナムにおいて、2023年度には追加での企業調査を実施した。質問票を用いて、組織としての企業が抱える問題、特にデジタル化に関連する問題についてデータを収集した。
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