研究課題/領域番号 |
21H00716
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
権 赫旭 日本大学, 経済学部, 教授 (80361856)
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研究分担者 |
池内 健太 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 上席研究員 (20625496)
深尾 京司 一橋大学, 経済研究所, 特命教授 (30173305)
金 榮愨 専修大学, 経済学部, 教授 (50583811)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生産性動学 / 労働生産性 / TFP / 成長会計分析 |
研究実績の概要 |
政策投資銀行『企業財務データバンク』の上場企業データを用いて1960年から2015年までの55年間の上場企業生産性長期(JLCP)データベースを作成した。 このデータベースを利用してほぼ全上場企業を対象に生産性上昇(労働生産性および全要素生産性TFPで測った)の成長会計分析と生産性動学分析を行った。日本経済が世界で絶賛された1980年代と長期停滞期のうち1995-2010年には、マクロ経済の生産性動向とは逆に、上場企業では1980年代に生産性上昇が大幅に低下し、1995-2010年に生産性が堅調に上昇した。またアベノミクス下でマクロ経済の生産性上昇が加速した2010-15年には、上場企業の生産性は停滞した。このようなマクロ経済と上場企業の間の生産性動向の違いは、上場企業とそれ以外の主に中堅・中小企業の間で、国際化や有形・無形資産投資、非正規雇用の拡大、リストラ等の速度が異なり、生産性上昇の規模間格差が変動しているためと推測される。明治期以来二重構造を抱えてきた日本経済の生産性動向を理解する上で、生産性の規模間格差の研究が今後重要であろう。一方、生産性動学分析によれば、TFPの高い上場企業にそれ以外の上場企業から資源が再配分されることにより上場企業全体のTFPが上昇する効果は小さく、上場企業全体のTFP上昇のほとんどは各企業内のTFP上昇(内部効果)で生み出された。ただし、2010-15年の非製造業では、大きなプラスの再配分効果が観測された。 (深尾京司・金 榮愨・権 赫旭(2021)「長期上場企業データから見た日本経済の成長と停滞の源泉」RIETI Discussion Paper Series, 21-J-27)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画は、日本企業の60年間にわたる長期間ミクロデータベースである政策投資銀行の『企業財務データバンク』や帝国データバンクの企業データを利用して日本の高度成長期と「失われた20年」を比較することだった。政策投資銀行の『企業財務データバンク』を利用して55年間の上場企業生産性長期(JLCP)データベースを作成して、長期間にわたる日本経済の成長と停滞の源泉を明らかにした。しかし、帝国データバンクのデータベース化が遅れているため、非上場企業を含めた分析結果は出ていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通りに、日本、中国、韓国および米国の事業所・企業レベルのミクロ・データを用いて企業動学の国際比較と企業動学に影響を与える要因に関する比較分析を進めながら、日本、中国、韓国、台湾の上場企業のデータを用いて国際比較可能なデータベースも作成する。
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