研究課題/領域番号 |
21H00740
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
梶川 裕矢 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (70401148)
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研究分担者 |
辻本 将晴 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (60376499)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ダイナミックケイパビリティ / ビジネスエコシステム |
研究実績の概要 |
本研究では従来、質問票調査や財務データをもとに推測されてきたダイナミックケイパビリティをM&Aや出資データといったビジネス情報ならびに特許データを用いた技術情報をもとに定量的に解析を行うことを目的としている。当該年度では、ビジネスエコシステムおよび技術ランドスケープにおける各企業の位置情報を、特許データおよび出資データを用いて算出した。対象としては特許や技術・事業戦略の重要性が高いと考えられる精密・電子機器業界、製薬業界を選択し分析を行った。 精密・電子機器業界を対象とする分析では、各社の特許データをもとに、国際特許分類(IPC分類)を用いて、特許ポートフォリオをベクトルで表現した。この時間的推移を時間微分することで、技術および事業のモーメンタムを導出し、自社のこれまでのトラジェクトリによる慣性の効果、他社の技術・事業モーメンタムによる引力・斥力を含む外力の効果を考慮した数理モデルを構築することが可能になるが、各社の技術的重複が必ずしも大きいとは言えないため、サブグループ等の詳細分類を用いると解析が困難となる。そのため、今後の解析のフィージビリティを確保するために適切なIPC分類の階層性の検討を行った。 製薬業界を対象とする分析では、対象疾患毎等の粒度で特許分析を行うと精密・電子機器業界と同様に技術的重複が少なくなることが予想されるため、ビジネスカテゴリに基づく分析から着手した。また、汎用製品を扱う精密・電子機器業界に対し、対象国・地域ごとに重要な疾患領域や希少疾患等のターゲットが異なることを考慮し、対象国を分析項目に追加し、製薬企業各社のM&Aや出資データを分析した。その結果、3つの戦略類型が存在することを見出した。今後は、これらの各類型内での戦略追随および類型を跨る大きな戦略転換の事例について詳細な分析を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
力学モデルを用いてダイナミックケイパビリティを解析するためのデータ分析が予定通り進捗した。また、製薬業界における3つの戦略類型のような新たな知見も見出した。一方、理論モデルの構築と検証が今後の課題であり、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
精密・電子機器業界や製薬業界のように業界毎に力学モデルを適用する際の適切な空間記述が異なるため、汎用的な設定が困難なことが分かった。そのため、汎用的な空間記述方法を追求するのではなく、対象業界の中で個々に適切な記述方法を探索・採用し、業界毎の分析を深めていくという方針で今後の研究を推進する。
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