研究課題/領域番号 |
21H00742
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
吉村 典久 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (40263454)
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研究分担者 |
堀口 朋亨 国士舘大学, 経営学部, 准教授 (20568448)
高浜 快斗 山形県立米沢女子短期大学, その他部局等, 講師 (20869523)
上野 恭裕 関西大学, 社会学部, 教授 (30244669)
曽根 秀一 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 准教授 (70634575)
加護野 忠男 神戸大学, 経営学研究科, 名誉教授 (80030724)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スピンオフ / 新規事業 / 大株主 / 経営者のキャリア / 事業戦略 |
研究実績の概要 |
本年は、研究計画全体の基盤を整える年として、データの検証可能性を探り、併せて文献の整理を行っている。本研究の特徴的な視角である、「子」の側の成長につれて、いかように「親」の側の事業ポートフォリオの組み替え、あるいは既存事業の強化が図られたのかに注意しつつ、日本窒素肥料から、積水化学、積水ハウス、旭化成へのスピンオフ、ソニーからソニー・コンピュータエンタテインメントへのスピンオフ、イトーヨーカ堂からセブン-イレブン・ジャパンへのスピンオフ、大日本セルロイドから富士フイルムへのスピンオフ、豊田自動織機製作所からトヨタ自動車へのスピンオフなど事例を調査した。その成果として、ワーキングペーパーの執筆を数多く行った。それらはOCU-GSB Working Paperシリーズとしてとして発表している。ワーキングペーパーの表題を紹介すると、 (1)「同一ルーツの企業は同じ戦略を選ぶのか-積水化学、積水ハウス、旭化成のハウス部門を比較して」、(2)「ハード(「モノ」/ソニー)からソフト(「コト」/旧ソニー・コンピュータエンタテインメント)へ-久夛良木健」、(3)「小売業(GMS/イトーヨーカ堂)から業態転換・小売業(CVS/セブン-イレブン・ジャパン)へ」、(4)「化学(電気化学/日本窒素肥料)から住宅三社(積水ハウスなど)へ」等である。 本年度の全成果の概数を示すと、書籍編著1冊、論文2本、ワーキングペーパー10本、その他4本、学会発表3回という成果を得た。 今後は、事業部門単位のスピンオフ(分離独立)は、事業をさらに成長・拡大させるための組織デザイン上の工夫であるという仮説の検証のため、ワーキングペーパーで取り上げた、「スピンオフ型企業家」がどのような経営手法を選択し、親子間や組織内でいかような役割を担ったのかを論文として示したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ過のため、聞き取り調査には困難が伴い、充分進展させることができていないが、文献を中心とした調査は着実に進行しており、多くのワーキングペーハーを作成できた。初年度の準備段階のアウトプットとしては充分だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度からは、文献調査で蓄積した知見を定性・定量の両側面から補強していくことを予定している。本研究の特徴は、データバースを活用した定量研究とヒアリングを基盤とした定性研究の双方を用いることになり、そのための準備を着実に進めていく。定量では、重回帰系の解析方法と因子系の解析方法を共に採用する予定である。定性では、スピンオフ当時の出来事を見聞きした人物にヒアリングすることを予定している。具体例を挙げれば、本年はチッソをルーツとする積水化学の住宅部門からスピンオフした積水ハウスの元役員等に話を伺う予定としている。 従来の研究では「子」の側の成長がいかに成し遂げられたのかに注目を集めてきたが、本研究では「子」の側の成長につれて、いかように「親」の側の事業ポートフォリオの組み替え、あるいは既存事業の強化が図られたのかにも注目をする。例えば、「子」のトヨタ自動車の成長を見越しての「親」たる豊田自動織機製作所(当時)の事業ポートフォリオの組み替えである。豊田自動織機は早期にその主力事業を、軽工業分野に関わる織機事業から大いなる成長が見込まれる重工業分野の自動車事業(「子」が担った)に転換を試みた。そして、それを通じて「子」の成長を支えるとともに「親」たる自社を含めてのグループ全体での成長をも成し遂げている。こうした関係、そこで担われた役割についても問うていく。 今後は上記の視角を基にした論文を積み上げていくことになる。
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