研究課題/領域番号 |
21H00815
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
橋本 鉱市 放送大学, 教養学部, 教授 (40260509)
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研究分担者 |
勝野 正章 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (10285512)
高橋 哲 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10511884)
白旗 希実子 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10735658) [辞退]
谷村 英洋 帝京大学, 教育学部, 講師 (50614632)
高橋 望 群馬大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (10646920)
丸山 和昭 名古屋大学, 高等教育研究センター, 准教授 (20582886)
日下田 岳史 大正大学, その他部局等, 専任講師 (30734454)
石井 美和 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (90713206)
立石 慎治 筑波大学, 教育推進部, 助教 (00598534)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 外部委託 / 教育産業 / 実務家教員 |
研究実績の概要 |
近年、全ての段階の教育機関で外部の営利・非営利組織との連携が進展し、限られた予算で複雑な課題の増大に応える方策として、教育活動の一部を外部委託する道が模索されている。本研究は、この外部委託の拡大によって出現しつつある、教育機関と外部の産業界・地域・市民社会の境界に立つ領域(EBF:educational boundary field)の実態について、教育段階を貫く縦断的な視点から国際的かつ実証的に分析し、EBFが孕むリスクの検証と共に、EBFが教育機関と外部社会とを適切に架橋する仕組みとなるための方策を提示する。本研究では、大きく以下の3点を分析課題として設定している。すなわち、①EBFは、どのような組織・部署・人材によって構成されているのか、②EBFは、どのような内容と方法により教育機関の一部の業務を担いつつあるのか、③EBFは、どのような価値観と論理によって、教育機関と外部の産業界・地域・市民社会との連携を推進しうるのか/しようとしているのか。本研究ではこれらの課題を、国際比較と実証的研究を通して明らかにすることを目的としている。実績の概要としては、(1)国際比較調査: EBF生成・拡大を促した制度、政策、市場環境などの要因を解明するため、先行研究及び関連文献の収集と整理を進めた。(2)量的調査:わが国のEBFの実態(アクター、ロジック、方法など)を把握するため、教育産業のデータベース構築し、EdTech関連企業の動向を分析するとともに、実務家教員に関する調査を実施した。(3)質的調査:各段階の教育機関における連携部門・組織、教育産業・NPOなどの外部組織への聴き取り調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では前述した研究課題の解明を達成するために、4 ヵ年にわたって、国際比較、量的調査、質的調査という3つのアプローチから調査・分析を進める予定であるが、その計画初年度として、以下のような作業を具体的に進めた。 (1)国際比較調査:教育に関する外部委託の進む諸外国(特に英米豪)におけるEBFの現状と、それに関わる政策・制度改革の状況や教育産業の動向について、先行研究及び関連文献の収集と整理を進めた。しかし、今年度はコロナ禍の影響・制約のため、現地調査がかなわなかった。(2)量的調査:コンサルタント会社が提供するデータを利用して7667社にのぼる教育産業のデータベース構築を行い、それをもとに業界全体の概観と業務内容を分析した。また経産省主導の「未来の教室」プロジェクトとEdTech関連企業の動向を分析した。これらの分析結果は、大学紀要に中間報告として発表した。さらに大学教育および大学教授職の現状と課題を解明するため、実務家教員養成を掲げる社会構想大学院大学実務家教員養成課程の修了生を対象とするアンケート調査を実施した。質問項目としては、修了生が同課程に入学した当時の状況や入学動機、学修成果に対する意識や満足度、同課程修了後の進路や経験などである。(3)質的調査:NPO法人、学校法人、大学経営コンサルタント、学習支援団体などを対象として、EBFの現状と課題について、パイロット的な聞き取り調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
計画期間2年目の令和4年度は、初年度の研究実績を踏まえた上で、以下のような作業を具体的に進める。(1)国際比較調査:初年度の実績を踏まえ、コロナ禍の影響・制約に鑑みながら、英米豪3国の現地調査を試みる。(2)量的調査:初年度において構築した教育産業データベースを利活用し、EBFを構成する個々のセグメントを選び調査を進める。具体的な対象としては、教育コンサルタント系企業、学習支援団体などである。またすでに実施した実務家教員養成課程の修了生を対象としたアンケート調査の分析を進める。(3)質的調査:昨年度の聞き取り調査で得られた知見を踏まえて、さらにEBFに属するアクターへの聞き取り調査を拡大する。具体的な対象としては、大学における外部企業・団体とのリエゾン領域に従事する教職員、ICTなどをメインとする新興の教育産業、教育産業から異動した大学教職員などである。これらと並行して、いくつかのEBF企業を選び、その起業から今日までの発展史の事例研究も進める。以上3つの研究課題を進めるが、得られた知見・データ・資料などは紀要論文ならびにワーキングペーパーとしてまとめ、諸学会で発表する予定である。
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