研究課題/領域番号 |
21H00845
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
大石 幸二 立教大学, 現代心理学部, 教授 (80302363)
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研究分担者 |
大橋 智 東京未来大学, こども心理学部, 講師 (00774217)
松下 健 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 教授 (90768706)
矢野 善教 作新学院大学女子短期大学部, 幼児教育科, 准教授 (10848352)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 発達障害乳幼児 / 遠隔相談 / 行動コンサルテーション / 社会関係 / 言語行動 / 非言語行動 / 行動論的技法 / 応用行動分析 |
研究実績の概要 |
第2年次(令和4年度)の研究では、第1年次(令和3年度)に実施した予備実験・予備調査における粗データの整理・分析を行った上で、遠隔面接における非言語行動の影響力の検討をさまざまな側面から行った。 研究代表者の大石は、発達障害乳幼児の発達支援に係る行動コンサルテーションにおける遠隔相談の効果を評価するために、まず、①乳幼児支援のための行動コンサルテーション実践の課題を整理した。その上で、②非言語行動を含む社会関係支援が精神的健康に及ぼす効果の検証を事例的に行った。しかし、予定していた実地調査と結果整理は、(現場の都合により)未実施に留まった。 研究分担者の大橋は、遠隔コンサルテーションにおける形成的評価を行うため、教職員等を対象としたコンサルティ評価尺度の作成を目指して、質問紙調査を行う予定であったが、コロナ禍に伴い学校を対象とした巡回相談の回数が減少したことにより、調査を行うことができなかった。そこで、保護者を対象とした遠隔相談の発話データを用いて、計量的テキスト分析を行うための作業を進めた。 研究分担者の松下は、第1年次(令和3年度)の研究を踏まえて、心理支援者の非言語的な要因が心理支援を要する者との信頼関係にもたらす影響をアナログ研究により検証した。第1年次には、体勢と視線の比較を行い視線の主効果を検出したが、第2年次には、服装と表情の2要因を取り上げ、被心理支援者の印象に及ぼす影響について大学生(40名)を評定者とするアナログ研究により明らかにした。 研究分担者の矢野は、遠隔コンサルテーション時の言語行動に影響を及ぼす非言語行動の影響の評価を行う予定であったが、研究協力校の都合(新型コロナウイルス対策による業務量増加)により、延期が繰り返された。遠隔コンサルテーションに関するニーズが高く、発達障害を背景に持つ場合が少なくない不登校の行動論的技法の展望を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年次(令和4年度)の研究期間も、新型コロナウイルス感染症による影響が続いていた。研究協力者(機関)の事情に加え、ワクチン反復接種者においても、感染症の陽性確認が相次ぎ、しかも感染症第2類相当のままであったことから、当初の研究計画を予定どおりに進めることができなかった面がある。しかし、分担研究者を含めて、大学に籍を置く研究グループとして、適宜、大学生等を対象とするアナログ研究なども駆使することにより、代替的なデータの取得を行い、保育・療育・教育機関を中心に計画を順調に進めることができなかった面を補う措置を講じた。 ただし、第4年次(令和6年度)には、行動コンサルテーションの枠組を活用した遠隔相談の社会実装を目指している。そのためにも、実験・実証研究段階での周到な準備と、エビデンスの蓄積が必要である。ゆえに、アナログ研究と事例研究を中心とするフィールド調査(パイロット研究)を進めていかなければならず、その研究ピッチを加速する必要がある。特に、行動コンサルテーションにおける遠隔相談の効果に交絡する変数の同定とその影響の評価は重要な課題である。 それでも、可能な範囲の努力を続けた結果、所期の研究成果見込みを上回る研究成果の公表も行っており、「おおむね順調に進んでいる」と評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の大石は、第3年次(令和5年度)研究において、行動コンサルテーションの枠組を活用した遠隔面接における非言語行動と言語行動の随伴ペアリングの効果についての検討に着手する。これは、2者の反応間の時間的近接性が随伴性として機能する過程で、介入としての効果を発揮するようになるという仮説を検証するものである。RA活用などの研究組織の見直しも積極的に検討しながら研究を推進する。 研究分担者の大橋は、第2年次(令和4年度)研究において予定していた尺度の信頼性・妥当性の検証は、学校を対象とした巡回相談等の正常化に伴い、継続して調査実施に向けて推進する。また同時に遠隔相談における発話データの計量的テキスト分析の検討を進める。計量的テキスト分析は、すでに分析枠組みを確立していることから、比較的容易に遂行することができると予測している。 研究分担者の松下は、これまでアナログ研究により進めてきた被心理支援者の信頼感に影響を及ぼす非言語的な要因について、有意な効果を示した変数を心理面接において操作する実証研究を推進する。心理面接のプロトコルはすでに確立していることから、比較的容易にこの研究計画を遂行することができると予測している。そして、第3年次(令和5年度)の研究成果を遠隔相談に応用する際の留意点について示唆を得る。 研究分担者の矢野は、第2年次(令和4年度)にて未実施のモデル・コンサルテーション場面の動画を研究協力者に提示し、言語行動に影響を及ぼすと要因に関する主観的な評定を得て、その記述内容を分析する。その上で、抽出された記述内容(カテゴリ化)が、実際に行動コンサルタントの成功的な面接を支える重要な要因になっているか機能分析を行う。 得られた知見は、速やかに学会誌に公表する。
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