研究課題/領域番号 |
21H00880
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
杉村 美紀 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (60365674)
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研究分担者 |
笹岡 幹子 (西村幹子) 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20432552)
布柴 達男 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10270802)
藤沼 良典 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (00826026)
小松 太郎 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (20363343)
杉浦 未希子 (杉浦未希子) 上智大学, グローバル教育センター, 教授 (80463884)
鎌田 武仁 上智大学, 上智大学, 助教 (50869518)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 学修成果の可視化 / 高等教育の質保証 / 比較国際教育学研究 / 21世紀型スキル / 国際共同研究 / 持続可能な開発のための教育(ESD) / リベラルアーツ・サイエンス教育 / 批判的思考 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、持続可能な社会発展を担うグローバル・シティズンの育成において「質の高い多様な学びの保証」を実現するために、批判的分析力と創造性に焦点をあて、学修成果の可視化に有効な成果指標と教授・評価モデルを、国際共同研究を通じて構築することにある. 初年度(令和3年度)には、本事業の研究実施計画に基き、(1)パイロット事業(令和2年度より開始)から実施してきた授業参加学生対象の質問紙調査およびフォーカス・グループ・インタビューの分析、(2)OECDの学修成果ルブリックに基づいた評価分析とOECDとの定期協議、及びOECD国際プロジェクト「高等教育における学生の創造力及び批判的思考のスキル」における国際会合への参加、(3) 日本比較教育学会(2021年6月25日・筑波大学)のラウンドテーブル"Sociocultural Contexts in Critical Thinking and Creativity"における研究発表、(4) 欧州アジア財団(ASEF)が51か国・機関のメンバーと実施した第8回ASEF高等教育地域会合(2021年9月10日・オンライン開催)への参加、(5) 本調査のキックオフ国際シンポジウム「高等教育における学びの創造と学修評価の質保証」の開催(2022年1月30日・ハイブリッド方式・上智大学)を実施した。研究成果は、学術論文の刊行、国内外の学会で発表した他、国際シンポジウムでは、基調講演にUNESCO本部よりDr.Noah Sobeを基調講演に迎え、環境教育、多文化共生、グローバルコミュニケーションの授業実践における分析結果を発表し、12か国220名の参加登録者を得て議論を展開した。さらに一連の成果はウエブサイト(https://sciep.org)を開設し公表することで、日本から発信する国際共同研究のプラットフォームの基盤を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(令和3年度)の実績は、全体としては当初の計画通りに進めることができた。そのうち(1)授業実践を通じた学修成果の評価指標の模索、(2)OECDの学修成果ルブリックに基づいた各授業における評価分析と、OECD国際プロジェクト「高等教育における学生の創造力及び批判的思考のスキル」における国際比較研究については、着実に研究活動を蓄積している。 この過程で、当初予定していたリベラルアーツ教育、環境教育、多文化共生の各分野に加え、本件プロジェクトに参加している上智大学、国際基督教大学の双方から言語教育の専門家4名の参画を得て、研究会を開催し、学修成果の評価に着手できたことは、当初の計画になかった新たな進展である。また 日本比較教育学会(2021年6月25日)のラウンドテーブル"Sociocultural Contexts in Critical Thinking and Creativity"では、批判的思考と創造性という概念について、海外協力者であるOECD-CERIのStephan Lancrin氏ならびに米国のGeorge Washington 大学のJames Williams教授 を招聘し、非西欧的コンテクストから概念定義等について議論した。このことは国際比較を通じてこそ得られた比較国際教育研究の成果と考える。 他方、教授・学修成果の評価研究を目的とした全米大学・カレッジ協会(AAC&U)のルーブリックを用いた検証作業については、初年度はまだ本格的に着手していないが、ユネスコや欧州アジア財団(ASEF)など初年度に研究ネットワークの基盤を確立できたことは大きな成果である。年度末のシンポジウムの議論でも"transformative education"と持続可能な開発のための教育(ESD)実現に向けた教育研究実践と学修成果の可視化は喫緊の課題であることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト2年目(令和4年度)は、学修成果ルブリック及び評価法モデルの検討を継続し、学修成果指標の構築に努める。OECDの国際比較プロジェクトは2022年で終了するため、同プロジェクトの総括を行うとともに、全米大学・カレッジ協会(AAC&U)のルーブリックの検討と連携協力を図る。また研究会を定期的に継続する。研究成果は、世界比較教育学会シンポジウム(2022年11月予定)および北米比較国際教育学会(2023年2月)で発表するほか、論文としてまとめ、英文書籍刊行の計画についても準備を開始する。なおコロナ禍による海外渡航制限が続く場合は、オンラインでの交流を積極的に活用する。さらに初年度に構築したウエブサイトによる成果発信に努める。 プロジェクト3年目(令和5年度)は、学修成果ルブリック構築および評価法モデル構築の試作を目指し、学生の能力の変化をOECDおよびAAC&Uと協力しながら経年的に比較する。結果を上智大学及び国際基督教大学間で共有し、協議を行い、リベラルアーツ教育、環境教育、多文化共生及び言語教育に関する授業法・学修法を改善施策を検討する。またインドで開催が予定されている世界比較教育学会国際大会にて、研究成果を発表する。 プロジェクトの最終年度(令和6年度)には、4年間の研究成果をまとめ、学生の能力変化と教授法の改善点との関係について統計的検定と、授業観察、フォーカス・グループ・インタビューを通して得た質的分析の結果を総合的に検討し、学修成果の可視化モデルの構築を図る。そのうえで教授法と批判的思考力及び想像力の2つの能力にどのような繋がりがあるのかを理論化する。なお、研究成果は、北米比較国際教育学会、日本比較教育学会等で発表するほか、海外共同研究者を招聘しての研究総括および国際シンポジウムを東京で開催する。さらに、論文および書籍として日英両言語で研究成果を発信する。
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備考 |
本サイトSophia Comparative and International Education Research Platform (SCIEP)は、比較国際教育学研究の拠点形成を企図して構築したもので、本科研を含め、上智大学を拠点とする比較国際教育学関連プロジェクトを掲載している。ウエブサイトは英語で運営され、国内外の研究者と教師を含めた日本発信の産官学間の学術交流ネットワークである。
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