研究課題/領域番号 |
21H00882
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
岡本 尚子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (30706586)
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研究分担者 |
黒田 恭史 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70309079)
肥後 克己 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(ポスト・ドクター) (70795351)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 視線計測 / 教師 / 教員養成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,算数教育に関して,熟達教師の着眼点に着目し,熟達教師が持つ「外的な観察では見えない指導技術(教師の技)」を視線計測手法によって可視化するとともに,それらをもとにした教材を作成することで有用な教員養成につなげていくことである。 本年度は,算数の「計算領域」の内容について,「教職課程に在籍し教育実習を終えた大学生(初心教師群)」「熟達教師群」の2群を対象とした視線計測実験を主に進めた。また,昨年度に取得した「教職課程に在籍しない大学生(非教師群)」のデータも含めて3群の視線計測データを分析し,熟達教師に見られる特徴を明らかにした。実験課題には,指導者として3桁÷1桁の除法筆算の解答動画を見て,解き方に誤りがあれば,手元のベルを鳴らす課題を設定した。動画は全4問とし,2問は正しい解答をする「正答パターン」,2問は誤った解答をする「誤答パターン」とした。 実験結果より,視線停留点の座標から視線移動距離を算出した。3群間の分散分析を行った結果,有意差が見られたため,TurkeyのHSD法(5%水準)による多重比較を行ったところ,熟達教師群が他の2群よりも有意に移動距離が短い結果となった。熟達教師群は,経験と知識により,無駄のない見方が可能になっていると考えられる。 次に,移動距離を正答/誤答パターンに分けて,各群内のパターン間比較を行った。その結果,熟達教師群,初心教師群は,パターン間に有意差が認められなかったが,非教師群は誤答パターンの方が長い傾向が見られた。熟達教師群と初心教師群は,知識があったことで,誤り予測ができたために誤り後にも混乱がなく,視線移動が増えなかったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度設定した実験課題を使用して,予定通り「教職課程に在籍し教育実習を終えた大学生(初心教師群)」「熟達教師群」の2群に視線計測実験を実施することができた。分析についても,複数の方法を検討することができた。現在は,視線移動距離に着目し,正答パターン・誤答パターンの観点から,考察に至っている。来年度も,これらをもとに実験を継続することが可能と思われ,全体として順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,算数の「図形領域」の内容について,「教職課程に在籍しない大学生(非教師群)」「教職課程に在籍し教育実習を終えた大学生(初心教師群)」「熟達教師群」を対象とした視線計測実験を主に進めていく。実験課題設定(内容,難度,制限時間,課題数)にあたっては,教員からの聞き取り,先行研究などから,算数において,熟達教師とそうでない教師の着眼点の差異が顕著に表れそうな内容を洗い出す。分析方法は,今年度に用いた観点を用いる予定である。
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