研究課題/領域番号 |
21H00921
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
吉冨 賢太郎 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (10305609)
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研究分担者 |
亀田 真澄 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 准教授 (10194995)
市川 裕子 東京工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (10290719)
樋口 三郎 龍谷大学, 先端理工学部, 准教授 (70272474)
長坂 耕作 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (70359909)
金西 計英 徳島大学, 高等教育研究センター, 教授 (80204577)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 数学オンラインテスト問題 / 形成的評価 / 線形代数 / 微積分 / チーティング耐性 |
研究実績の概要 |
数学eラーニングにおいて、教材の柱は解説動画と自動採点システムを使ったオンラインテスト問題である。本研究の主要テーマは、特に問題教材について、チーティング耐性を持つ問題を開発し、まず、形成的評価を目的とした教材活用により、高い教育効果を狙うものである。同時に、自宅等でのオンラインテストにおいても、理解度を評価できる問題も目指す。本年度においては、まず、チーティング耐性のある問題とはどのような問題かを検討し、一定の考察を得た。まず、チーティングについては、当初の想定通り、(1) 数式処理ソフトやクラウド計算ソフト(Wolfram Alphaなど)の参照・利用、(2) Yahoo知恵袋や親族・友人のような他者による協力、の2つが主なチーティング方法と考えられる。これらチーティング利用で問題が解決したり、もしくはそれが直接評価に結びつくようでは、教育効果や正当な評価の観点からは、不十分であると考えられる。結論の1つとして、計算機に入力したり人に聞いたりする手間よりも、自分で考えて課題を実行した方が簡潔で自然と学習や理解が進むような問題を潤沢に用意することが重要であると考える。 また、分担者の長坂は、主にそのような問題として、かねてから取り組んできた多肢選択の他、並び換え問題による教育効果について検証している。代表者も、数式入力とアルゴリズム判定が可能なSTACKにより、単なる計算問題ではなく、考えることでしか解答の得られないような問題の開発に取り組み線形代数の授業で利用している。オンライン演習問題と評価用小テストに分け、オンライン演習では形成的評価を目的として、演習書レベル以前の基礎的問題から始めてやや高度なものまでの問題の拡充につとめ、学生のアンケート評価や成績によりその効果について検証を始めたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は、これまで開発してきた問題を実際に具体的にチーティング耐性の観点から分担者らと協議し、精査、改良していく予定であったが、開発にかなりの時間を要したために、そのような作業ができなかった。ただし、このような問題を他の大学の研究協力者に提供していく方法については、協議検討ができた。分担者・亀田が自身の授業ですでに活用しているサーバー(以下亀田サーバー)上で代表者・分担者が問題を設置し、LTIと呼ばれる外部の学習管理システム(LMS)から利用するAPIを用いて提供することとし、亀田サーバーの整備・増強を行うこととした。ただし、昨今の計算機用の資源の枯渇などによるハードウェアの供給不足で、年度ぎりぎりまで作業がずれこみ、研究の遅れの原因の1つとなった。また、亀田サーバー上では、STACKの他、並び換え(Ordering Question)問題タイプのプラグインも追加されており、この機能をより効果的にするための改良について、研究協力者や分担者らと協議した。ただし、仕様の検討に協力してもらった発注先が、年度内は受注できない状態のため、来年度に繰り越しとなった。一方、実際に教材を利用して効果検証に協力してもらう大学・高専の数学教員にいくつかの関連する学会やシンポジウムにおいて周知する予定であったが、教材の準備が間に合わなかったことや国内出張がほぼ不可能であったことなどから、現在のところまだ周知が進んでいない。これらも次年度進める予定である。 以上のような理由により、進捗状況は遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
線形代数における問題の拡充について、現在代表者自身が担当している大阪公立大学工学部向け線形代数のフルコースを土台として教材の整備・改良・チーティング耐性の検討を進める。問題は、主にSTACKによって構成されている。STACKは基本は数式入力によるものであるが、行列の型も含めて問う場合に有効な可変サイズ(行列の型が指定されず、テキストエリアに入力する形式)の解答形式が可能となっており、より有効性が期待される。 また、多肢選択問題は、代表者や長坂がかねてからMoodle標準の多肢選択問題を、Mathematica などの数式処理システムにより自動生成する手法により開発してきたが、STACKにより、部分点や誤答選択時・正解非選択時におけるフィードバック機能を持たせる方法を代表者が考案し、そのような形でバグのない多肢選択問題の充実化を進めている。さらに、長坂による並び換え問題は、学生の計算過程や思考過程を問うことができる問題タイプとして有効性が期待される。このような多様な問題タイプによる問題構成により、教材の整備を進め、来年度からできるだけ広範囲に利用してもらえるよう、月1回から2回程度で問題検討を進める予定である。また、補助的ではあるが、動画教材の確認もすすめ、合わせて、微積分の教材についても検討を進める予定である。動画教材については、通年講義のすべての内容についての動画で一般的に利用できるものが少なく(線形代数については、代表者が全面公開している)、微積の解説動画の情報収集も進めていきたい。また、問題については、長坂らにより多肢選択問題が比較的潤沢に開発されており、こちらについてもチーティング耐性の視点から確認を進めていきたい。
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