研究課題/領域番号 |
21H00928
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
多羅尾 進 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (80300515)
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研究分担者 |
藤原 康宣 一関工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40290689)
津田 尚明 和歌山工業高等専門学校, 知能機械工学科, 教授 (40409793)
冨沢 哲雄 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (60549707)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高度ロボット統合化実装力 / 総合的技術者養成 / モバイルマニピュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では,複合・融合的な技術を積み重ねていくコンセプトの下,移動の柔軟性を備えたモビリティプラットフォームに,さらに1)産業用協働型双腕ロボットおよび,2)汎用的低自由度アームを付加して,「モバイルマニピュレーション」用ロボットを用意して社会(現場)実装課題に取り組むことを狙っている.2022年度において,前年度に整備した(モバイルマニピュレーション用協働型双腕ロボット,およびベースとなるモビリティを主要素とする)前者1)を発展させることに加え,後者2)に主として取り組んだ. 前者1)については,協働型双腕ロボットを用いて,人と同じ空間で作業することを想定し,対象物体を双腕で把持できるようシステム開発を行い,産業界にニーズがある対象物体のひとつとして,複雑形状であり変形しやすいペットボトルを選定し,実際のロボットを用いて本システムの基本動作を達成した.把持の対象物体を画像処理など通じて認識できるよう,物体検出アルゴリズムYOLOv5を用い,その物体撮像と距離測定を同時に行うためのセンサとして深度カメラが組み込まれたシステムを構成している.具体的には,ベルトコンベア上の物体が転倒している状態を想定し,倒れたペットボトルに対して双腕によってペットボトルの上部・下部を支えるアプローチで把持動作を試みた.実機実験を通じて物体認識から把持動作に至る一通りの動作を実現した. 後者2)については,ミドルサイズのモビリティ教材キットを対象として,その汎用性やカスタマイズ性など確保することを意識したプラットフォームの開発に取り組んだ.モータ・車体フレームの基本セットは用意し,それ以外,車輪やボディなどは自在に設計・製作できる新たな教材を目指した.オープンデザイン方式での開発を指向し,それを活用した試作に適用できるよう,図面,部品表など必要なもの一式を,関係高専と共有する方針で進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
冗長性を備えた全14自由度の協働型双腕ロボットを用いて,以下の特徴を有する把持動作を指向した.1)複数箇所で対象物体を支える,2)任意の位置姿勢の対象について適応する,3)動作一連の中で過度な力をかけない,4)多様なアプローチで把持対象物体に接近,5)把持と連携した複数動作を組み合わせられる.単腕による把持では,単純な把持動作ゆえに微妙な加減が難しく対象物体にダメージを与えることも想定され,把持の中で他の動作を組み合わせる冗長性も見られない.これに対し,上述した特徴を指向する双腕での把持では対象物体に無理なく安定して把持することが期待でき,先を見越した複数の動作を組み合わせる可能性を備える. 一方,ミドルサイズのモビリティ教材キットを対象としたプラットフォームについては,比較的安価なモバイルマニピュレーション用教材として展開できるよう,その可動式ベースを基本的な差動二輪式のモビリティで構成する教材の試作を行った.ミドルサイズのモビリティに低自由度アームを搭載し,汎用性やカスタマイズ性など意識する方向性で,1)オープンデザイン方式での開発を指向し,図面,部品表など一式を関係高専と共有,その中でモータ・車体フレームの基本セットは共通化する一方,他の部分は自由に設計・製作できるような教材となっている.その機体内ネットワークにはFA通信プロトコルのModbusを採用している.ROSを効果的に活用し(モータ制御用のサンプルコードも公開されている),かつ近年のロボット開発でもよく用いられ,主流の一つとなってきている高級言語pythonを用いることにより,プログラミングのハードルを下げる工夫を行った.一連の取り組みによって,本教材を効果的に用いれば,ロボット開発の初心者でもおおよそ半年間あれば,移動ロボットの機体と制御システムの基本部分を完成させられることが確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに整備してきた,教材・各種開発環境を発展させ,デジタルツイン(実機+シミュレータの連動)の機能を充実化する.並行して,総合的技術者養成パッケージとして整理し,これを活用したロボットSI(システム・インテグレーション)教育を提案・試行し,その効果を確認することに取り組む.多様な期待に応えられるロボット利活用技術者を育成するために独自のロボット(モビリティ)プラットフォームにロボットアームを搭載した“アーム+モビリティ(モバイルマニピュレーション)統合化教材”が基本となり,これを活用しながら,社会実装プロセスを経験させ,ロボット利活用技術を身に付けられるようにするものを意識している.ロボット工学分野の社会実装テーマは本来,複合・融合的な技術を積み重ねていくプロセスが必要となるが,障壁とも成り得るこの過程を開発用プラットフォーム統合化教材によって適切にサポートできるようにする当初の考えを具体化する. 2021年度は,比較的大規模の産業用協働型双腕ロボットを中心としたプラットフォームの試作を行い,2022年度は,これを継続しつつ,新たに汎用的低自由度アームを導入して,「モバイルマニピュレーション」用ロボットのシステムを構成した.この中の制御ソフトウェアについては,下位レベルのモータ制御用のプログラム開発要素,ゲームコントローラによる遠隔操作の要素等も含まれる. これらを踏まえ2023年度は,自律走行に欠かせない,周囲の幾何学的情報を計測するための比較的安価な測域センサを導入し,モビリティ教材の機能強化を図る.並行して,マニピュレーションに関わる手先効果器を主とするプロトタイピングに加え,さらに2022年度に整備されたアーム搭載型移動ロボットのハードウェア/ソフトウェア開発環境を活用し,モバイルマニピュレーションの(デジタルツインを含む)総合的環境を作り込んでいく所存である.
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