• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実績報告書

健康、防犯、防災行動を規定する社会ネットワーク構造の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H00929
配分区分補助金
研究機関東京大学

研究代表者

高木 大資  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (10724726)

研究分担者 島田 貴仁  科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
大山 智也  東北大学, データ駆動科学・AI教育研究センター, 助教 (80893776)
畑 倫子  文京学院大学, 人間学部, 准教授 (90727918)
相馬 敏彦  広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (60412467)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード社会ネットワーク分析 / 防犯行動 / 中心性 / 2モードネットワーク
研究実績の概要

本年度は、ある自治体に居住する65歳以上男女を対象とした郵送調査から得られた1935人のデータを用いて、高齢者の地域内社会ネットワークの測定、およびその構造と特殊詐欺予防行動の関連についての分析を行った。
具体的には、対象者に地域内で所属している複数のグループ(町内会、高齢者クラブ、地域サロン、防犯ボランティアなど)の具体名を記述式で尋ね、個人×グループのマトリックスを作成し、同一グループに参加している人々の間には潜在的に社会的紐帯が存在するとみなすネットワークデータを作成した(2モードネットワーク)。その結果、267人×113グループのマトリックスから成る住民間の社会ネットワークが得られた。このデータに基づき、ネットワークの構造的指標として、各個人の中心性(次数中心性、近接中心性、媒介中心性)を算出した。
このネットワークデータの分析から下記の知見が得られた:①ネットワーク内で中心性が高い人ほど、特殊詐欺の予防行動(留守番電話機能付き固定電話の導入)を採用している傾向が強く、防犯行動に関する知識(市の補助制度についての認知、留守番電話機能の有効性についての認知)を有している傾向も強かった;②中心性が高い人と紐帯を有する個人の行動は、その中心人物の行動と正の関連を示した。
これらの結果から、予防行動を早期に採用しているネットワーク中心性が高い人物とのつながりが、地域内で予防行動を普及させる際の介入ポイントとなる可能性があることが示唆された。
また、地域内のネットワークを測定する際につながりを有する他者の個人情報を尋ねることなく潜在的な紐帯およびその構造を測定できること、このように測定されたネットワークにおいても理論的に予測される結果(中心人物の行動特性、中心人物からの行動の社会的伝播)が観察可能であることを示した点は、ネットワーク研究への方法論的貢献を有すると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定通り、高齢者の地域内社会ネットワークの測定、およびその構造と予防行動に関する解析が完了した。成果を学会で報告し、海外学術雑誌への投稿準備中であることから、研究はおおむね予定通りに進んだといえる。

今後の研究の推進方策

本研究において、個人×グループの2モードネットワークに基づいた分析により、地域内のネットワークにおける構造と予防行動の関連を明らかにした。一方で、現代社会においては人々の社会関係は地縁のみに基づくのではなく、情報通信技術の発展・普及などによって空間的に拡大している。そのため、今後の研究においては、地縁に依らない社会ネットワークと諸種の予防行動の関連を検討する。
具体的には、郵送調査・ウェブ調査を行い、ネームジェネレータ法・ネームインタープリター法によって回答者の親密な5人の他者について、その人たちの特性、居住地域、相互作用媒体(対面、メール、SNSなど)、および彼らの間のつながりの有無を尋ね、地縁に限定しない回答者の親密圏ネットワーク(エゴセントリックネットワーク)の特性および構造を測定する。また、対象者を高齢者だけでなく子育て中の親、恋人がいる若年者にも拡大し、この地縁に限定しない「選択的な」ネットワーク内の他者の行動やネットワーク構造が、健康、防犯、防災に関する予防行動とどのように関連しているのかを明らかにする。
そこから得られる知見と、2モードネットワークに基づく地域内ネットワークの分析から得られた知見を統合し、人々の行動に影響を与える社会ネットワークがどこに存在しているのかを明らかにし、予防行動の規定因として有望な社会関係の特徴を特定する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Neighbourhood transportation, elapsed years, and well-being after surrendering the driver's licence in older Japanese adults: The JAGES longitudinal study2023

    • 著者名/発表者名
      Masayo Yano, Masao Ichikawa, Hiroshi Hirai, Tomoki Ikai, Naoki Kondo, Daisuke Takagi
    • 雑誌名

      Archives of Gerontology and Geriatrics

      巻: 107 ページ: 104898

    • DOI

      10.1016/j.archger.2022.104898

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] COVID-19流行前後の健康関連行動の変化と時間割引率の関連:J-SHINE2017、2020を用いた分析2023

    • 著者名/発表者名
      大川卓朗, 高木大資
    • 雑誌名

      厚生の指標

      巻: 70 ページ: 26-34

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Information and communication technology, educational attainment, and disparity in health information from one’s personal social network: The J-SHINE 2017 cross-sectional study2022

    • 著者名/発表者名
      Takekazu Kitagishi, Daisuke Takagi
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 17 ページ: e0275285

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0275285

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Parks/sports facilities in local communities and the onset of functional disability among older adults in Japan: The J-shaped spatial spillover effects2022

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Takagi, Naoki Kondo, Taishi Tsuji, Katsunori Kondo
    • 雑誌名

      Health & Place

      巻: 75 ページ: 102801

    • DOI

      10.1016/j.healthplace.2022.102801

    • 査読あり
  • [学会発表] 社会ネットワークの評価・研究2023

    • 著者名/発表者名
      高木大資
    • 学会等名
      日本社会関係学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 自治会間ネットワーク構造に基づいた地域介入の可能性2022

    • 著者名/発表者名
      高木大資
    • 学会等名
      日本心理学会
  • [図書] AIはどのように社会を変えるか:ソーシャル・キャピタルと格差の視点から2022

    • 著者名/発表者名
      佐藤嘉倫, 稲葉陽二, 藤原佳典
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      東京大学出版会
    • ISBN
      978-4-13-050205-4

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi