研究課題/領域番号 |
21H00942
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
上宮 愛 金沢大学, 人文学系, 講師 (50555232)
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研究分担者 |
仲 真紀子 立命館大学, OIC総合研究機構, 教授 (00172255)
伊藤 大幸 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (80611433)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 司法面接 / 子どもの証言 / 自伝的記憶 |
研究実績の概要 |
児童虐待や事件・事故の被害者、目撃者となった子どもから、正確にその供述を聴取することを目的として、「司法面接」と呼ばれる面接技法が用いられる。本研究課題では、自閉スペクトラム症(ASD)をもつ子どもによる司法面接でのパフォーマンス(報告される情報量・正確性・誤情報量など)に影響を及ぼす要因について の解明を目的としている。 司法面接では、子どもが過去に体験した自身に関わる出来事の記憶(自伝的記憶・エピソード記憶)について報告を求めることになる。先行研究より、ASD児者は、定型発達(TD)児者に比べて、自伝的記憶の想起量が少ないことが指摘されている。加えて、自伝的記憶の機能研究においては,過去の出来事について,考えたり,人に話したりする人ほど,自伝的記憶の3つの機能(自己,方向づけ,社会)を頻繁に使用することが示されている。 今年度は、ASD者とTD者の自伝的記憶の機能について探索的に比較検討することを目的としたオンライン調査を実施した。20代から70代のASD者とTD者450名を対象として、自伝的記憶の機能の使用頻度を問う日本語版TALE尺度、自閉スペクトラム指数 (AQ)、WHO-5精神健康状態表簡易版の3つの尺度への回答を求めた。 その結果、ASD群では、TD群に比べて、過去の出来事について考える頻度が多く、また、TALEの自己機能,方向づけ機能をより多く用いていることが示された。本調査の結果から、ASD児者の自伝的記憶の想起量がTD児者に比べて少ないことが先行研究等で指摘されているが,それは,回想頻度が低いことによるものではない可能性が示唆された。今後は、ASD者の自伝的記憶の機能の検討に加えて、想起された自伝的記憶の内容について検討するための調査を進め、これらの記憶特性が司法面接での想起量にどのような影響を及ぼすのかについて検討を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究対象としている、自閉スペクトラム症の診断がある子どもの参加者募集がうまく進まず、実験の実施が当初の予定よりも遅れている。また、子どもを対象とした実験として実施する予定であった、ASD児者の自伝的記憶の特性に関わる研究を対面形式で実施することが難しく、成人を対象としたオンラインでの調査の実施に切り替えた。
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今後の研究の推進方策 |
自閉スペクトラム症の診断をもつ子どもの研究参加者募集を複数の県での実施に切り替えて行なっている状況である。また、子どものデータを補填するような形で、自閉スペクトラム症をもつ成人に対するオンライン調査を並行して実施する予定をしている。
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