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2021 年度 実績報告書

加齢に伴う喪失前後の変化を捉える測定法の基盤確立

研究課題

研究課題/領域番号 21H00943
配分区分補助金
研究機関国立研究開発法人国立長寿医療研究センター

研究代表者

中川 威  国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 主任研究員 (60636942)

研究分担者 小林 江里香  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (10311408)
権藤 恭之  大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (40250196)
斎藤 民  国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 部長 (80323608)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード感情 / 高齢期 / 加齢 / 縦断研究 / 日誌法 / 経験抽出法
研究実績の概要

[研究の目的] 世界的に平均寿命が延伸し,病気や障害,疲れや痛みなどの加齢に伴う喪失にいかに対処すべきかが重要な課題になった。先行研究は,高齢期には喪失が生じやすいが,多くの人は喪失に適応でき,病理的状態に陥らず,健康的状態を保つことを示した。しかし,先行研究は年間隔で追跡したため,日・月間隔で生じる喪失に伴う変化を捉えられず,人が喪失に,いつ,どのように適応したか?という問いに十分答えていない。
本研究は,適応指標として感情を用い,日・月・年などの複数の時間間隔で追跡することで,喪失前後に感情はどのような短期的変動と長期的変化を示すか?短期的な変動のしやすさは長期的に適応を促すか,妨げるか?という問いに答えることを目的とする。
[研究実施計画] 本研究では,前述した目的を達成するため,3つの研究を行う計画である。具体的には,一般高齢者を対象として,①30年以上の縦断研究により,病気や障害などの急に生じる喪失に伴う感情の長期的変化を検討する研究1,②日誌法・経験抽出法により,疲れや痛みなどの徐々に生じる喪失に伴う感情の短期的変動を検討する研究2,③複数の時間間隔で追跡するバースト測定法により,感情の短期的変動が長期的変化を予測するか検討する研究3を行う。
[研究の成果] 研究1では,19年間追跡した調査のデータを用いて,長期的変化を検討する分析を行い,国内学会で発表1件,国際学会で発表1件を行った。研究1の結果として,先行研究と異なり,多くの人は喪失後に心身の状態が悪化し,喪失前の水準に回復しない一方,長期的変化には個人差が大きいことが示唆された。
研究2では,日誌法による調査のデータを用いて,短期的変動を検討する分析を行い,国内学会で発表2件を行った。研究2の結果として,感情は日間隔で変動しており,年間隔での追跡では,喪失に伴う変化を正確に捉えられないことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

[2021年度の研究実施計画] 4年間の研究期間のうち,1年目にあたる2021年度は,研究1の分析と調査,研究2の予備調査と倫理審査申請,研究3の倫理審査申請を実施する計画であった。
[研究1] 19年間追跡した調査のデータを用いて,病気や障害などの喪失前後の感情の長期的変化を検討する分析を行う計画であった。計画通り,分析を行い,学会発表を行った。また,調査参加者のうち,2021年度に死亡が確認されなかった者からデータを収集する計画だった。計画通り,住民票での死亡確認および郵送調査を実施した。以上から,研究1は順調に進展したと判断した。
[研究2] 調査項目の選定や実現可能性の検討を目的として,日誌法による調査のデータを分析するとともに,経験抽出法による予備調査を実施する計画であった。計画通り,分析を行い,学会発表を行うとともに,スマートフォンを用いた経験抽出法による予備調査を実施した。また,2年目にあたる2022年度に本調査を実施するため,調査地域の自治体との調整や募集方法を含めた研究計画の検討を行う計画であった。計画通り,自治体との調整を進めた。本調査の実施時期が未定のため,倫理審査申請は行わなかった。以上から,研究2は順調に進展したと判断した。
[研究3] 2年目にあたる2022年度に本調査を実施する計画であるため,募集方法を含めた研究計画の検討を行い,倫理審査を申請する計画であった。計画通り,研究計画の検討を行った。当初は一般高齢者を対象とすることを検討していたが,一般高齢者は喪失を経験しているとは限らないため,病気や障害を持つ人およびその家族を対象とするように研究計画を変更した。対象者の募集のため,自治体との調整を進め,倫理審査申請は行わなかった。以上から,研究3はおおよそ順調に進展したと判断した。

今後の研究の推進方策

[2022年度の研究実施計画] 4年間の研究期間のうち,2年目にあたる2022年度は,研究1の分析,研究2および研究3の本調査を実施する計画である。
[研究1] 19年間追跡したデータを用いて,病気や障害などの喪失前後の感情の長期的変化を検討する分析を2021年度に引き続き行う計画である。得られた結果を取りまとめ,論文投稿を行う。
[研究2] 2021年度に,1日に1回の回答を求める日誌法による調査のデータを分析した結果,感情の変動を正確に捉えられないことが示された。そのため,スマートフォン使用者に,1日に複数回にわたり回答を求める経験抽出法による調査のみを実施する計画に変更し,予備調査および本調査を実施する計画である。
[研究3] 2021年度に,募集方法を含めた研究計画の検討を行い,病気や障害を持つ人とその家族を対象とするように研究計画を変更し,自治体との調整を進めた。引き続き自治体との調整を進め,予備調査および本調査を実施する計画である。これらの対象者は,比較的高齢であり,スマートフォンの使用割合が高くないため,当初は経験抽出法を用いる計画であったが,月間隔のみでの追跡や日誌法を用いる計画への変更も対応策として検討する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (4件)

  • [国際共同研究] Baylor Scott & White Health(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Baylor Scott & White Health
  • [国際共同研究] City University of Hong Kong(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      City University of Hong Kong
  • [雑誌論文] Does positive affect predict mortality and morbidity? A 19-year longitudinal study of middle-aged and older Japanese adults2022

    • 著者名/発表者名
      Nakagawa Takeshi、Nishita Yukiko、Tange Chikako、Tomida Makiko、Otsuka Rei、Ando Fujiko、Shimokata Hiroshi
    • 雑誌名

      Journal of Research in Personality

      巻: 97 ページ: 104204

    • DOI

      10.1016/j.jrp.2022.104204

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 高齢者における日々の社会的交流と感情の関連:日誌調査による検討2022

    • 著者名/発表者名
      中川 威、安元佐織、樺山 舞、松田謙一、権藤恭之、神出 計、池邉一典
    • 学会等名
      日本発達心理学会第33回大会
  • [学会発表] Hard-to-Survey概念を再考する開けられる扉/開けづらい扉/鍵のない扉2022

    • 著者名/発表者名
      黒澤 泰、三橋翔太、松平 泉、中川 威、増井幸恵
    • 学会等名
      日本発達心理学会第33回大会
  • [学会発表] Trajectories of Functional Health Following Stroke: The Role of Social Resources2021

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Nakagawa、Taiji Noguchi、Ayane Komatsu、Masumi Ishihara、Tami Saito
    • 学会等名
      GSA 2021 Annual Scientific Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Influence of Social Determinants on Self-Rated Health in Three Countries of East Asia2021

    • 著者名/発表者名
      Jinmyoung Cho、Takeshi Nakagawa、Dannii Y. Yeung
    • 学会等名
      GSA 2021 Annual Scientific Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Prejudice and discrimination against people with dementia2021

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Nakagawa、Taiji Noguchi、Tami Saito
    • 学会等名
      The 15th International Congress of the Asian Society Against Dementia
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 今夜の睡眠が翌日の疲労感と関連する:高齢者を対象とする日誌調査2021

    • 著者名/発表者名
      中川 威、安元佐織、樺山 舞、松田謙一、権藤恭之、神出 計、池邉一典
    • 学会等名
      日本心理学会第85回大会
  • [学会発表] 心疾患罹患に伴う人生満足感の変化2021

    • 著者名/発表者名
      中川 威、野口泰司、小松亜弥音、石原眞澄、斎藤 民
    • 学会等名
      日本老年社会科学会第63回大会
  • [図書] 心理老年学と臨床死生学2022

    • 著者名/発表者名
      佐藤眞一、中原 純、豊島 彩、田渕 恵、中川 威、春日彩花、権藤恭之、石岡良子、上野大介、稲垣宏樹、鈴木則夫、大庭 輝、平井 啓、辻本 耐、松井智子、竹村節子、中里和弘
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      9784623093212
  • [図書] 感情制御ハンドブック2022

    • 著者名/発表者名
      有光興記、飯田沙依亜、榊原良太、手塚洋介、森岡陽介、金子迪大、村田明日香、原田知佳、山本恭子、浦野由平、岩佐和典、小林亮太、日道俊之、増井啓太、野崎優樹、川本哲也、野内 類、服部陽介、渡邊言也、中川 威、他
    • 総ページ数
      432
    • 出版者
      北大路書房
    • ISBN
      9784762831829
  • [図書] 情動制御の発達心理学2021

    • 著者名/発表者名
      上淵 寿、平林秀美、篠原郁子、中道圭人、石井佑可子、中川 威、森口佑介、中尾達馬、遠藤利彦
    • 総ページ数
      280
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      9784623091614
  • [図書] 非認知能力2021

    • 著者名/発表者名
      小塩 真司、川本 哲也、竹橋 洋毅、原田 知佳、西川 一二、平山 るみ、外山 美樹、千島 雄太、野崎 優樹、中川 威、登張 真稲、箕浦 有希久、有光 興記、石川 遥至、平野 真理、小野寺 敦子
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      北大路書房
    • ISBN
      9784762831645

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公開日: 2022-12-28  

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