研究課題
思春期の単極性うつ病や双極性障害は,ADHDとの併存頻度の高さや鑑別が困難であるという問題や,ADHDに併存するうつ病は,双極性障害に移行するリスクが高いことが指摘されている(Biederman et al., 2009)。本研究課題では,うつ病や双極性障害の予防的支援に向けて,縦断調査研究と双生児を対象とした行動遺伝学の観点から,思春期の抑うつと双極性障害傾向におけるADHDの併存の問題について検討することが主な目的である。2022年度は,2021年度に引き続き,気分障害や発達障害の診断を受けている臨床群と養育者,および非臨床群の子ども(10-18歳)を対象に行った質問紙調査のデータを蓄積し,分析を進めている。これまでの調査データの一部を用いて,思春期の心理的適応に深く関わる第二次性徴に着目し,思春期身体発育が抑うつの主症状である抑うつ気分と興味・喜びの喪失のどちらとより関連しやすいのかを確認しつつ,子どもが認知している両親の養育態度が思春期身体発育の程度と抑うつの高さとの関連をどのように媒介するのかについて分析を行った。その結果,思春期身体発育と抑うつの2つの下位次元との関連には部分的に性差がみられることが確認され,とりわけ女子において,父親の養育の温かさをどのように認知しているかが抑うつの低さと関連することが明らかとなった。このことは,思春期の抑うつにおいてリスクの高い子どもに対しては,父親が温かくコミュニケーションをとることが抑うつの高まりの抑止に対して有効な手立ての一つとなる可能性を示唆するものである。
2: おおむね順調に進展している
本年度の調査研究は当初の計画通りに進んだため,おおむね順調に進展していると判断した。これまでに収集したデータについては,順次分析を行っていき,出来る限り早く結果をまとめて研究成果として発表できるように進めていく。
現状において,研究計画の修正や変更などの予定はない。次年度に予定している調査協力者の状況や開始時期などを考慮したうえで,研究計画の遂行を妨げることのないように,必要に応じて調査方法の工夫や配慮をしながら調査を実施していく予定である。次年度も引き続き,適宜,精神医学の専門家にアドバイスを求めながら,さらなるデータの蓄積と研究成果の発表に向けて努めていく。
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International Journal of Obesity
巻: 46 ページ: 1901~1909
10.1038/s41366-022-01202-3