研究課題/領域番号 |
21H00960
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
楠見 孝 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70195444)
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研究分担者 |
横澤 一彦 筑波学院大学, 経営情報学部, 教授 (20311649)
浅野 倫子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40553607)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 共感覚 / 比喩 / 通様相性 / 感覚間相互作用 / 個人差 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,共感覚比喩と共感覚現象に関する認知メカニズムとその個人差を解明することである。1年目の計画は,大規模web実験のための実験材料を,予備実験に基づいて構成し,1回目の大規模web実験を実施することであった。 構成した予備実験材料の内容は,(1)色字共感覚課題(40項目)(Asano & Yokosawa,2011)(2)共感覚経験質問紙改定版(29項目,Engelman, et al., 2007の22項目に追加),(3)共感覚形容詞比喩理解可能性評定(47感覚形容語×5感覚モダリティ名詞の235通りの語句,例:甘い音),(4)芸術に関する趣味(5項目),(5)音楽,美術等の経験年数(3項目),(5)色字共感覚課題(2回目)であった。 そして,20-50代の調査会社モニター600名にオンライン実験を実施した。信頼性の高い回答者を選ぶスクリーニングを,回答時間とダミー項目への正答,色字共感覚課題における回答の偏りのないことを基準にしておこなった。その結果,302名を分析対象とした。各指標の評定分布と相関を検討した。共感覚経験度と共感覚比喩理解度の相関(.40)は中程度,色字共感覚得点と共感覚比喩理解度の相関(.18)は低かった。 この予備実験の結果に基づいて,1回目の大規模実験の材料を作成した。新たに加えた課題は,色字以外共感覚課題(五感-色16 触覚8,味10,嗅覚8,聴覚8,空間配列6,数字-人10,味-形3, 合計69項目)であり,実験の序盤と最後の2回,安定性測定のために回答を求めた。実験参加者は,20-50代の調査会社モニターの回答者に,予備調査と同様のスクリーニングをおこない,継続参加者142名,新規参加者669人となった。分析の結果,新たに作成した色字以外共感覚課題の安定性は,味-形と香り-視覚(.66)が高く,音,味-触覚(.42)が低かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にしたがって,予備実験の結果に基づいて,最初の大規模web実験のための実験材料を構成し,20-50代の調査会社モニターに対して実施した。信頼度の高い参加者を選ぶためのスクリーニング手法を検討した上で,分析を行った。今後の研究のための土台となるデータを収集し,実験参加者のパネルを構成できた。 その成果の一部は,日本理論心理学会大会において,シンポジウム「共感覚と多感覚統合―個人特異的メカニズムと共通メカニズム」をハイブリッド開催し、さらに『理論心理学研究』に論文を掲載した。 以上の通り研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
第一に,2021年度の実施した大規模web実験の分析をさらに進め,課題ごとの回答や得点の分布に偏りがないか,さらに指標間の相関などを検討する。 第二に,その結果に基づいて,2回目の大規模オンライン実験のために,実験材料の修正と追加を行う。 第三に,2回目の大規模オンライン実験をおこなう。2021年度実験参加者のパネルを用いて,再検査信頼性をあわせて検討するとともにに,新規パネルの作成も行う。 なお,新型コロナウイルスの流行のため,旅費などで計上していた費用が,一部使用できなくなった。これは大規模web実験を行う費用に充当する予定である。
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