研究課題/領域番号 |
21H00964
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
東山 篤規 立命館大学, OIC総合研究機構, 教授 (00118001)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 体性感覚 / 視覚 / 順応 / 傾斜 |
研究実績の概要 |
重心計とモーションキャプチャーを用いて,傾斜床面への順応とそれに伴う身体各部の位置の変化に関する測定を行った.実験は,環境傾斜装置の中の水平床面に被験者をたたせ,その間に身体各部の位置を座標値を用いて測定し(ベース期),その後+10度(上り坂)あるいは-10度(下り坂)に傾けられた床面上に被験者をたたせ(順応期),再び床面を水平にして被験者の身体各部の位置を測定した(残効期).各時相は90秒.被験者は12人. 2022年度は,このようにして得られた実験データの解析に集中した.まず1)被験者の重心についてベース期と残効期の間に差がみとめられたのは,順応傾斜が-10度のときのみであり,重心が前方に移動したことが示された.2)頭-腰の軸については,ベース期と残効期の間に差が認められたのは順応傾斜が+10度のときのみであり,このときは軸が前方に傾いた.3)腰-足首の軸については,ベース期と残効期の間に差が認められたのは順応傾斜が+10度のときのみであり,腰が前傾したことを示唆した.4)膝-足首の軸については,ベース期と残効期の間に差が認められたのは順応傾斜が+10度のときと-10度のときであり,前者の場合は,膝が曲がったことを意味し,後者の場合は膝が伸びたことを意味する.順応傾斜が上り坂と下り坂の双方において,ベース期と残効期の間に差が得られたのは膝-足首の軸であり,この軸の重要性が認められる. 今回の分析は2022年に公刊された研究論文「Postural and visual aftereffects to a slanted floor in lying and sitting positions」の結果を補う.この公刊研究では,傾斜角への順応効果を,主観的水平を指標にして分析しており,身体感覚の主観的水平は5度程度とされる.これは本実験の身体軸の変化の方向と一致する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にモーションキャプチャー装置を購入したが,それが今年度の実験に想像以上に役だった.
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今後の研究の推進方策 |
順応のため,観察者は,回転軸を中心に水平面から上下10度の範囲を往復運動している装置の床面に直立する.このとき,前庭系の耳石を支える有毛細胞は垂直を維持しつづけるが,半規管中のリンパ液は回転と反回転を繰り返し膨大部稜の有毛細胞を刺激しつづける.同時に足首の筋腱も連続的に刺激される.順応直後に,観察者はテスト刺激として与えられる床面の運動速度を判断する.この研究では,体性感覚と視覚の順応特性を明らかにすると同時に両者の相互作用を解明する.いずれの感覚でも速度知覚に順応が生じるならば,試行の進行に伴って主観的速度が減少する(感度の低下)し,主観的静止状態が順応刺激の方に移行すると予想される. 実験1(体性感覚条件).観察者は20人の大学生.各観察者は目隠しをし,装置の側壁に対面し開脚姿勢で直立する.床の移動角は-10度から+10度までの20度.順応速度は0.8と1.4 rpm.ひとつの順応速度に3分間順応した直後に,テスト刺激として,順応速度の外にその上下に0.3と0.6rpm離れた5速度が与えられ,観察者は,その見かけの速度をマグニチュード推定法によって推定する.このあと観察者は静止水平面上で10分間休み,それから別の順応速度に3分間順応する.その直後に,先と同じ要領に従って,5テスト刺激の速度を推定する.統制群は順応刺激が与えられない条件である. 実験2(視覚条件).観察者は20人の大学生.観察者は開眼したままで室内の中央部の水平の平台に立つ.順応刺激とテスト刺激は実験7と同じであるが,観察者は,部屋のみの運動を平台から視覚的に観察する.その他の手続きは実験1と同じ. 実験3(体性感覚+視覚条件).観察者は20人の大学生.各観察者は開眼して,上下に運動する床面の上に立つ.他の手続きは実験1と同じ.
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