研究実績の概要 |
本研究では, 複素幾何や代数幾何に現れる“様々な非負曲率性”を研究する. 具体的には, (a) 接ベクトル束の特異計量, (b) 正則断面曲率, (c) オービフォルドの反標準束に対する“非負曲率性”を研究し, 非負曲率を持つ射影多様体やKaehler多様体に対する構造定理を確立し分類理論へ応用する. 2021年度は数値的に半正値な反標準束を持つKLT対を研究した. 成果として, このKLT対に付随するMRC射(maximally rationally connected fibration)に対する構造定理を確立した. これはJuanyong Wang(中国科学院)との共同研究である. 応用として, Calabi-Yau型のKLT対の分解定理を証明し, 対数的極小モデル理論に現れる基本構成要素(basic building blocks)が有理連結多様体, アーベル多様体, (strict)Calabi-Yau多様体, 正則symplectic多様体の直積に分解できることを証明した. これはBeauville-Bogomolov-Yau分解のKLT対への拡張を与えるもので当該分野の決定的な成果である. その証明で順像層の解析的正値性の理論や葉層構造の理論を発展させた点も成果のひとつである. また, 消滅定理の複素解析的研究についての成果を学術誌に掲載させることができた点も成果である. この研究は, 80代のKollar の理論をより広いKaehler 幾何の枠組みで再構築し, 特異計量を用いて超越的な特異性をも扱える複素解析的な理論を与えるものである.
|