研究実績の概要 |
本研究では, 複素幾何や代数幾何に現れる“様々な非負曲率性”を研究する. 具体的には, (a) 接ベクトル束の特異計量, (b) 正則断面曲率, (c) オービフォルドの反標準束に対する“非負曲率性”を研究し, 非負曲率を持つ射影多様体やKaehler多様体に対する構造定理を確立し分類理論へ応用する. 2022年度は擬有効な接ベクトル束を持つ射影代数多様体の極小モデル理論について研究した. 成果として, 因子収縮・flip・Fano射を繰り返した後に, 極小モデル理論の出力としてアーベル多様体の準エタール商が現れることを証明した. その過程で, 正規多様体上の擬有効な連接層の特異計量の理論を整備した点も成果のひとつである. また, 数値的に半正な反標準束を持つKLT対の構造定理の極小モデル理論への応用についても研究した. 具体的には, 一般化された極小モデル理論(the generalized Minimal Model Program)のカテゴリーでの非消滅予想への応用を研究した. その成果として半正値な反標準束に対する非消滅予想を有理連結多様体に場合に帰着することに成功した. これは一般化された非消滅予想に対して有理連結多様体の力学系の視点という新しい視点を与える. 証明では, 数値的に半正な反標準束を持つKLT対がCalabi-Yau多様体上の定数射を持つ点に注目し, 基本群の有理連結多様体の自己同型群への表現を調べることで, 数値的に半正な反標準束の順像層の平坦性を導いた.
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