研究実績の概要 |
今年度は冪乗型非線形項をもつ半線形熱方程式に関して高橋仁氏(東京工業大学) と共同研究を行った.本研究では方程式を不変とする自然なスケール変換に関して不変となる臨界ルベーグノルム(臨界ノルム)に着目し,解の臨界ノルムがどのように振舞うか考察を行った.ここで「滑らかな解が有限時刻で発散(爆発)するとき,臨界ノルムが発散するか?」という所謂, 臨界ノルム爆発問題は[Brezis,Cazenave, J. Anal. Math.,1996]において言及されている他,Quittner, Soupletによる著書(Birkhauser Advanced Texts,2019)においてもmost interesting and/or challenging open problemsのリストに挙げられている基本的な問題である.球対称性などを課さない場合,この問題は未解決であったが,[溝口,Souplet, Adv. Math.,2019] において解の爆発レートがtype Iであれば,臨界ノルムは発散することを示された.儀我氏らによる一連の研究により, Sobolev劣臨界の場合は爆発は常にtype Iであることが示されているので,臨界ノルムは常に発散することがわかる.本研究では[儀我,Kohn, Comm. Pure Appl. Math.,1985]によって導入された重み付きエネルギーを用いた解析や,調和写像熱流に対する[Struwe, J. Diff. Geom.(1989)]によるblow up解析のアイディアを発展することで,Sobolev優臨界の場合にtype Iの仮定がなくても爆発時刻付近において臨界ノルムが非有界になることを示した.本研究結果の系として,Sobolev優臨界の場合,臨界ノルムが有限な後方自己相似解が存在しないことが示すことができる.
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