研究課題/領域番号 |
21H01049
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福田 順一 九州大学, 理学研究院, 教授 (90392654)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | キラリティ / 液晶 / スカーミオン / コレステリックブルー相 / トポロジカルフォトニクス / タイトバインディング模型 / 光学計算 |
研究実績の概要 |
昨年度に行なった,キラル液晶が形成する擬2次元スカーミオン(渦状の配向秩序構造)からなるヘキサゴナル格子と同じ対称性を有するモデル構造について,その光学的性質の検討をさらに発展させた.具体的には,より単純かつ本質を捉えたタイトバインディング模型を構築し,バンドトポロジーの性質の解明や,バンドトポロジーの異なる構造の境界でのエネルギー輸送におけるキラリティの存在の影響などに対する考察を行なった.また,キラル液晶の擬2次元スカーミオン格子のフォトニックバンド構造などの検討も,電磁場のマクスウエル方程式を直接的に解くことによって開始し,バンド構造に対する誘電率異方性の変化の影響などを考察した. また本研究のターゲットの1つである,キラル液晶が示す3次元秩序相であるコレステリックブルー相の秩序構造の詳細について幾つかの検討を行なった.まずブルー相の双晶構造について,昨年度行なった双晶面の自由エネルギー評価に関する論文を公表するとともに,双晶の形成を伴うコレステリックブルー相の構造相転移のダイナミクスについて,液晶の配向秩序変数のダイナミクスを表す方程式を直接的に数値計算で解くことによる検討を開始した.また,有限の厚さの系(液晶セル)において,液晶とセルの表面との相互作用(アンカリング)の影響でセルの厚さ方向の構造の周期が離散的な値しか取れないことを示すとともに,およびその構造の周期と,構造が示す光学的性質に対する印加電場の影響について数値計算を行い,論文として公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラルな系に対するモデル構築とその検討については順調に進んでいると考えている.またキラル液晶の擬2次元スカーミオン格子についても光学的性質の検討を開始している.
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今後の研究の推進方策 |
上述のキラルでヘキサゴナルなモデル2次元構造に関する単純なタイトバインディング模型の性質についての研究を引き続き進める.そこから得られた知見を元に, 最終的なターゲットの1つである,スカーミオン(渦状の配向秩序構造)からなるヘキサゴナル格子を含む液晶の性質について,直接的な光学計算と組み合わせることでより統一的普遍的な理解を試みる. またもう1つのターゲットであるコレステリックブルー相については,大域的な構造変化を伴わない構造相転移の結果として生じる双晶構造の生成メカニズムについてより詳細な検討を行う.双晶構造の生成ダイナミクスはソフトマターの秩序形成の興味深い例として考察に値するのみならず,双晶面においてはフォトニックバンドの非自明な構造に基づく性質が顕在化する可能性があり,そのような観点からの考察を行う. その他には,まだ検討に至っていない磁性粒子を含むコレステリックブルー相,および分子が磁性を有する液晶系についても,フォトニックバンド構造などの光学的性質の検討を行う. また有限の厚さの系に単色光が入射した際の応答を計算するための手法への改良の可能性を前年度見出したが,詳細な検討が十分に進められていないので,その検討も行う.
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