研究課題/領域番号 |
21H01053
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
岩城 光宏 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 主任研究員 (30432503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メカノバイオロジー / DNAナノテクノロジー / 筋収縮 / 協同現象 / ミオシン |
研究実績の概要 |
本研究では、独自に開発した人工ナノ筋肉を用いて筋ミオシンの協同現象の直接可視化を行うのが目的である。本年度では、協同現象を生み出すのに重要となる力学コミュニケーションを蛍光シグナルで検出するフォースセンサを設計し、人工ナノ筋肉内への組み込みを検討した。フォースセンサは、バネとして機能する部位とバネの伸縮に応答して蛍光シグナルを変化させるレポーター部位から構成される。そこで、バネとして機能する部位に蜘蛛の糸を構成するペプチドを利用し、両端にcy3,cy5色素を配置してFRETシグナルが検出される設計を行った。人工ナノ筋肉を構成するDNAオリガミへの連結を行い、設計通りにラベルされるところまで確認できたが、ラベル率が思いのほか向上しなかったため、ペプチドベースでなく、一本鎖DNAをバネとして用いる設計に変更を行った。DNAオリガミに始めから組み込まれる設計となるため、フォースセンサのラベル率が100%であり定量性の高い計測が期待できる。また、cy3,cy5のFRETシグナルの検出だと2色を力測定に用いる必要があり、アクチンやミオシンなどを同時に観察できないため、cy3とクエンチャのペアに変更を行った。これによって、バネの伸展に伴ってcy3の蛍光強度変化が観察され、1色観察で力測定を行うことができる。 以上のように修正を施したDNAオリガミのフォールディング条件を決定し、精製および原子間力顕微鏡を用いた観察を行ったところ、設計通りに作成できていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フォースセンサの設計を根本から見直す必要があったため、当初は計画からやや遅れていたが、見直したおかげで100%のラベル率が可能な、より良い設計を進めることができた。当初計画では、フォースセンサを組み込んだ人工ナノ筋肉の設計を行うのが、初年度の目標であったため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次のステップとして、フォースセンサが組み込まれたDNAオリガミに筋ミオシンを連結し、ATP存在下でアクチンの滑り運動を観察する。私どもが行ったシミュレーション予測では、筋サルコメア構造の持つミオシンの厳密な空間配置によって、特徴的な時空間パターンを持つ力学場を生み出すことが示唆されているため、まずは、ガラス基板上にランダムに吸着させたミオシン集団の力学場の観察を行い、次に、ミオシンの空間配置が制御された人工ナノ筋肉内の力学場の観察を行う。空間的なパターンは通常の蛍光顕微鏡の空間分解能で検出できない可能性もあるため、コンフォーカル顕微鏡や超解像顕微鏡の利用も想定しながら実験を進めていく。
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