研究課題/領域番号 |
21H01058
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
吉村 信次 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (50311204)
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研究分担者 |
寺坂 健一郎 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (50597127)
荒巻 光利 日本大学, 生産工学部, 教授 (50335072)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トポロジカル光波 / 光渦 / プラズマ / レーザー誘起蛍光法 / 流れ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来の平面波光を用いたレーザードップラー分光では原理的に不可能なレーザーの進行方向に垂直なイオン・中性粒子の流れ速度計測を、トポロジカル光波と呼ばれる特殊な光の一種である光渦(ラゲールガウスビーム)を用いたレーザー誘起蛍光(LIF)法によって実現することである。光渦がもつ螺旋状の等位相面のため、方位角方向の速度成分にもドップラー効果が働くことが理論的に示されており、実験による検証が進められている。 本年度は、光渦LIF法に最適なラゲールガウスビームのモードを数値計算によって検討した。理論的には、より大きなトポロジカルチャージ(方位角方向モード数 l)と小さなビームサイズが求められるが、これまで径方向モード数 pについての検討は行われていなかった。先行研究において開発したコードを用いて、光渦LIFスペクトルの変形に対する径方向モードの寄与を解析した。結果として、径方向モード数の変化によるスペクトル形状の変形は小さいことがわかった。そこで、今後の実験では径方向モード数 p=0のラゲールガウスビームを用いることとした。 次に、核融合科学研究所のHYPER-I装置を用いた光渦LIF法の原理実証実験を行った。イオンを加速するために装置内に負電圧を印加できる電極を設置し、プラズマ中の電極近傍のシース・プレシース領域に直径100μm以下に絞ったトポロジカルチャージ10の光渦ビームを入射し、光渦LIFスペクトルを計測した。その結果、負バイアス電圧の増加とともに光渦LIFスペクトルの幅(標準偏差)が増加することが観測された。この結果を、国際会議での口頭発表および査読付き論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、光渦レーザー誘起蛍光(LIF)法に最適なラゲールガウスビームのモードの検討を行い、径方向モード数pの依存性が小さいことを明らかにできた。トポロジカルチャージ10以上の光渦ビームを用いることで、ビームを横切る流れによる有意なスペクトル形状の変化が期待される。実験では、高速のイオン流を生成するために負電圧を印加可能な電極をプラズマ装置中に設置した。電極前面に電極と平行方向にビームを入射し光渦LIFスペクトルを計測することで、バイアス電圧によるスペクトル幅(標準偏差)の増加が初めて観測された。一方、ドップラー拡がり以外にも様々な要因によりスペクトルは拡がるため、標準偏差からビームを横切る流れ速度の絶対値を決定することは容易ではないこともわかった。次年度以降、光渦LIFスペクトルの標準偏差以外を用いた流速決定法についても検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
トポロジカルチャージ10、直径100μm以下の光渦ビームを用いたレーザー誘起蛍光(LIF)計測によって、ビームを横切る流れがスペクトルの幅を増加させることが確認された。一方、スペクトルの幅から流速の絶対値を決定するためには、いくつか課題が残っている。スペクトル形状は計測位置におけるビームの強度分布に強く依存するため、次年度は装置内にビームプロファイラを設置し、実験で用いる光渦ビームの強度分布のその場観測が行えるようにする。非常に細いビームを用いるため、受光系の位置合わせも課題の一つとなっている。次年度は、より精密な位置合わせができるようHYPER-I装置のフランジを改造する。これらの改良を行った後に、引き続きHYPER-I装置を用いた光渦LIF法の原理実証実験を遂行する。 もう一つの方向として、光渦ビームの強度分布を能動的に制御し非対称性をもたせることを検討している。本研究における光渦LIFスペクトルの幅の拡がりは、ビームの強度分布が軸対称であることに起因している。つまり、あえて対称性を崩したビームを用いることで、ビームを横切る流れの効果をスペクトルのシフトとして検出できる可能性がある。従来の方法に加えて、この非対称光渦LIFについても研究を進めていく。
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