研究課題/領域番号 |
21H01086
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
遠藤 基 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (70568170)
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研究分担者 |
奥井 武道 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 協力研究員 (20837637)
北野 龍一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50543451)
飛岡 幸作 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 協力研究員 (70784461)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | クォーク / レプトン / ミューオン加速 / アクシオン |
研究実績の概要 |
近年、素粒子標準理論では説明のできない素粒子反応の実験結果がいくつか報告されている。これらの結果は素粒子標準理論のクォークやレプトンが未知の相互作用をもつことを示唆している。とくにB中間子崩壊やミューオンの異常磁気モーメントの結果は未知の相互作用による効果の可能性が高いことが指摘されている。遠藤は、これらの結果に基づいて素粒子標準理論を超える新しい物理理論の正体の解明に向けて研究を行なった。また、正電荷のミューオンは電子を捕獲することによって中性化し、室温程度まで冷却させたうえでレーザーでイオン化し、超冷ミューオンを作る技術開発がKEKのJ-PARCにおいて行われている。北野は、この超冷ミューオンビームをTeVエネルギーまで加速して利用する衝突器型実験(μTRISTAN)を提案した。大強度電子ビームと衝突させることにより、有能なヒッグス工場として機能する可能性を検証した。また、正電荷ミューオン同士の衝突により、超対称性粒子の生成なども期待できることを示した。特に、ミューオン磁気能率実験値の標準理論予言からのズレを説明するような模型の検証に有望な実験である。飛岡と奥井は比較的重いアクシオン粒子や準アクシオン粒子の検証可能性を探った。とくに、高次の量子補正計算を世界で始めて行うことで、既存のBファクトリー実験がこれらの粒子に非常に高い感度をもつことを示した。さらに、将来に有望なチャンネルをテルアビブ大学の実験グループと共同で精査した。また飛岡は、これまで検証が難しいとされてきたヒッグス粒子と第1世代クォークとの相互作用が、有効理論を通して3体ゲージボソンの終状態によって測定可能であることを示し、将来の実験による到達感度を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠藤はクォークやレプトンに働く未知の相互作用を探る研究を概ね予定通り進めている。北野は未知の粒子や相互作用を探るために新しい実験を提案して検討を進めている。飛岡と奥井はアクシオン粒子など軽い新粒子の検出に向けた研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
遠藤は引き続きクォークやレプトンに働く未知の相互作用を探る研究を進める。とくに、2022年度にはBelle II実験やミューオンの異常磁気モーメントの新しい実験結果が報告されることが予定されている。これらの実験結果に基づいて、未知の相互作用の特定を目指す。北野はミューオン加速実験について、より詳細な検討を行い、物理実験としてどのような性能を示しうるか研究を進める。また、宇宙のバリオン数生成やその背後の場の理論的研究も行う。さらにミューオンの異常磁気モーメントの理論計算方法の開発も行う。 特に、QED部分の摂動計算をコンピュータで行うフォーマリズムを確立する。飛岡は奥井と共に軽い新粒子の候補としてアクシオン粒子や準アクシオン粒子の検証可能性だけではなく、さらに他の長寿命粒子がタウレプトン対などに崩壊した場合の検証法と新物理へのインパクトを調べる。また、KOTO実験の固定標的でアクシオン粒子が生成され、それが離れた検出器に飛び込んだあとに崩壊する可能性の検証可能性を評価する。また、将来のステライルニュートリノの検証可能性に関する研究を始める。奥井は、さらに原始ブラックホールの生成メカニズムのさらなる可能性を探る。
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